2019 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of fast hydride ion conductors by utilizing anharmonic vibrations
Publicly Offered Research
Project Area | HYDROGENOMICS: Creation of Innovative Materials, Devices, and Reaction Processes using Higher-Order Hydrogen Functions |
Project/Area Number |
19H05050
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
飯村 壮史 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 特定講師 (80717934)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヒドリドイオン / 非調和振動 / 水素 / 金属水素化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は主に第一原理計算を用いて水素化ランタンおよび金属ランタンのフォノンバンドとその非調和性を調べ,軽い水素が示す非調和振動によってどれだけ熱伝導度を低減できるのか,また熱電材料としてのポテンシャルについて検討した.まずVASPを用いて精密に構造緩和を行い,その後Phonopyを用いてフォノンのバンド分散および各分枝のモードグリュナイゼン定数を評価し,非調和性の程度とその非調和なフォノンのモードを調べた.二重六方晶構造を持つ金属ランタンと部分的に水素化されたLaH2は全てのモードにおいて2以下のモードグリュナイゼン定数が得られ,ほとんど調和振動で記述できるフォノン分散を持っていることが分かった.一方,ランタンの価電子をすべて水素に吸わせたLaH3では音響モードのうちの一つの分枝が8を超える大きなモードグリュナイゼン定数を有することが分かった.このモードは,110面に垂直な方向にランタンと水素が共同して動く振動から成り,振動方向と垂直に波が伝搬する.LaH2は蛍石型構造を取るが,LaH3はこれに加えて過剰水素が八面体隙間を占有する.ヒドリドイオンの半径が約1.2Aであることを考えると,LaH3中の水素間距離は2.4Aとなっており,アニオン同士であるにも関わらず互いにほとんど接していることが分かる.LaH2のフォノンがほとんど調和振動で記述できることを考えると,LaH3中の高密度凝集した水素が非調和振動を誘起していると考えられる.音響モードは分散が大きく固体の熱の大部分を輸送する.そのため,LaH3の音響モードに見られたSnSe等の既存の低熱伝導度材料と同等に大きい非調和振動は,LaH3の熱伝導度を大きく低減する可能性があり実験によって検証する価値があるものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の第一原理計算からLaH3は水素量を変化させることでフォノンの非調和性をコントロールできることが分かった.もともとLaH3は水素量を減らすことでランタンのd軌道から成る伝導体に電子をドープし電気伝導度を向上させることができることも分かっている.したがって,LaH3は水素含有量を調整するだけで電気伝導度と非調和性の両方の制御が可能になる.フォノンの非調和性の指標であるグリュナイゼン定数は,その二乗がフォノンの散乱頻度に比例するため,大きな非調和振動は熱伝導度を下げる働きがある.軽いために非調和性を帯びやすい水素の量を調整することで熱伝導度を制御する戦略は,これまでBiやPb,Sn等の重元素が持つローンペアーを利用して格子歪の効果によって熱伝導度を制御してきた従来の材料設計とはまったく異なるものであり,低熱伝導度材料や熱電材料として水素化物が有望であることを示している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はLaH3の熱伝導度をPhono3pyを用いて計算し,重元素のローンペアを使わずにどこまで熱伝導度を低減できるかをまず計算から検証する.つぎにLaH3-y薄膜を作成し,熱伝導度,電気伝導度,ゼーベック係数を実験的に評価し,水素化による非調和振動導入によって材料の熱伝導度をどこまで低減できるかを探る.
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Research Products
(4 results)