2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Novel Metal Hydride Catalysts Composed of Transition Metal Hydrides and Perovskite Oxides
Publicly Offered Research
Project Area | HYDROGENOMICS: Creation of Innovative Materials, Devices, and Reaction Processes using Higher-Order Hydrogen Functions |
Project/Area Number |
19H05057
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
劔 隼人 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60432514)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヒドリド錯体 / アゴスティック相互作用 / 希土類金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属酸化物等の担体上に反応性に優れた金属ヒドリド錯体を担持した化学種を想定し、金属ヒドリド錯体の合成、ならびに効率的にヒドリド錯体を与える前駆体となるアゴスティックヒドリド錯体の合成とその触媒特性に関する研究を実施した。一般に金属ヒドリド錯体はアルキル金属錯体に対し、水素ガスを添加することによって得られるが、前駆体であるアルキル金属錯体は非常に反応性が高く、合成・単離が困難であることが多い。従って、担体表面上でヒドリド錯体を得ようにも、その合成過程が問題となる。一方、金属ヒドリド錯体を与える一つの方法としてその前駆体として炭素-水素結合やケイ素-水素結合、ホウ素-水素結合がアゴスティック相互作用した錯体が挙げられ、その後の結合切断によりヒドリド錯体を与える。今回、ケイ素-水素結合が希土類金属中心にアゴスティック相互作用した錯体の合成に成功し、さらに、その反応性を解明する過程で、ルイス塩基がケイ素中心に相互作用することでルイス塩基-ケイ素結合、および金属-ヒドリド結合の生成が促進され、反応性が高く、不安定な希土類ヒドリド錯体を与えることを見出した。また、低原子価の遷移金属錯体に対して末端アルキンの炭素-水素結合がアゴスティック相互作用した錯体においては、酸化的付加反応により金属ヒドリド錯体が一時的に生成し、その錯体が速やかに他の末端アルキンと反応することで、触媒的なクロスカップリング反応に利用可能であることを明らかにした。このように、不安定な金属ヒドリド錯体の前駆体としてのアゴスティックヒドリド錯体の有用性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属ヒドリド錯体の合成法自体が困難な場合が多い一方、その安定な前駆体の合成法を確立することができれば、様々な金属中心を有するヒドリド錯体を迅速に合成することが可能となる。その観点から、アゴスティックヒドリド錯体に着目して遷移金属錯体の合成を検討し、典型元素―水素結合が相互作用した錯体の合成法が確立されつつあることから、さらにそれらの反応性を明らかにし、新規触媒反応への応用の準備が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を通じて、アゴスティックヒドリド種の合成法としてヒドリドボレートなどのアニオンを含む添加物を金属錯体に加え、アニオン交換を行う方法が広く適用可能であることが明らかになりつつある。そこで、希土類金属や前周期金属錯体に対し、ヒドリドボレートアニオンを添加し、続いてルイス塩基を加えることによるアゴスティックヒドリド種からヒドリド錯体への変換法を確立し、広範囲のヒドリド錯体やヒドリド材料合成につなげる。
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