2019 Fiscal Year Annual Research Report
極めて若い原始星天体に付随した円盤構造とその進化の観測的研究
Publicly Offered Research
Project Area | A Paradigm Shift by a New Integrated Theory of Star Formation: Exploring the Expanding Frontier of Habitable Planetary Systems in Our Galaxy |
Project/Area Number |
19H05069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大屋 瑶子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00813908)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電波天文学 / 星形成 / 惑星系形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、形成して間もない原始星に付随する円盤構造の物理的性質を観測的に明らかにすることで、その背景にある物理過程の抽出、およびその後の物理進化の包括的理解に迫ることである。このため、国際共同大型電波干渉計アルマの最高性能 (解像度および感度) を駆使して、形成最初期にある円盤構造の正体を鮮明に描き出す。加えて、5~10個の若い低質量原始星天体 (Class 0/I) について、原始星と円盤の質量を正確に評価することで、これらの構造の共進化過程を検証する。これらの観測的成果を理論研究と結びつけることで、星・惑星形成史の初期過程の全容理解を目指す。 本研究課題では、超低質量原始星天体IRAS 15398-3359に付随する円盤構造を、かつてない高解像度と高感度の観測によって明らかにする。そのため、既存の望遠鏡の10倍にも上る高い解像度と感度をもつ国際共同大型電波干渉計アルマ (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array; ALMA) の性能を最大限駆使した観測を実施してきた。ALMAを用いた電波観測では、高い周波数分解能によって、ガスに含まれる分子の回転励起線を捉え、ガスの運動を解析することができる。本研究課題のターゲットである形成初期の小さな円盤構造は、原始星付近の複雑な物理構造に埋もれているが、特定の分子輝線に着目することで選択的に捉えられる。申請者および共同研究者は、この分子輝線の選定には機械学習の手法の一つ (Primary Component Analysis) が有効であることを示した。この化学診断の手法を駆使してALMA観測データの解析を実施することで、IRAS 15398-3359を始めとした超低質量原始星天体およびその候補天体における円盤構造の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超低質量原始星天体IRAS 15398-3359の円盤構造における、ALMAを用いた観測データの解析を実施した。この解析は、申請者が指導する大学院生 (大小田結貴) を主体として進めている。この天体は形成の最初期段階にあると考えられ、その円盤構造は小さい。申請者は以前より、原始星付近の複雑な物理構造の中から本研究課題のターゲットである小さな円盤構造を選択的に捉えるため、化学診断の手法を活用してきた。この手法をより一般化するため、IRAS 15398-3359の観測データに対して、機械学習の手法の一つであるPCA (Primary Component Analysis) を用いた解析を実施した。16種の分子輝線と連続波の分布を分類し、どの構造がどの分子輝線によって捉えられるのかを明らかにした。この結果、H2CO分子、CH3OH分子、SO分子の輝線が、円盤が形成される原始星近傍のガス構造を捉えることがわかった。この成果は、国内外の会議で発表するとともに、学術論文として投稿中である。PCAを用いたアプローチは、他の天体における観測データでも同様に活用することができると考えられる。この手法の確立は、本研究課題において、形成初期にある小さな円盤構造を効率よく解析する助けになると期待される。 申請者は、欧・米との国際共同研究であるALMA Large Program「FAUST (Fifty AU STudy of the chemistry in the disk/envelope system of Solar-like protostars)」を、共同研究者として進めている。このプロジェクトは13天体に対する大型化学サーベイであり、上記のIRAS 15398-3359の観測を含む。この天体の観測データは既に一部取得されており、申請者が指導する大学院生を主体として解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、ALMAを用いた高解像度・高感度観測を実施することで、IRAS 15398-3359を始めとした超低質量原始星天体の円盤構造の解明を進める。この際、現在までの進捗状況で述べた機械学習を利用した化学診断の手法を駆使する。これにより、形成最初期にある円盤構造の、原始星周りでの3次元構造を描き出すとともに、速度構造の詳細解析から回転則を決定する。その結果をもとに、円盤構造の安定性の指標であるToomre Q値を正確に評価することで、この構造の物理的性質を調べる。 現在までの進捗状況で述べたように、申請者は現在、欧・米との国際共同研究であるALMA Large Program「FAUST」を、共同研究者として進めている。このプロジェクトによって得られた豊富な観測データに加えて、昨年度の観測公募 (Cycle 7) でもIRAS 15398-3359の観測が新たに採択されており、本年度中にデータが取得される見込みである。ALMAの膨大なアーカイブデータも活用することで、5~10個程度の若い (Class 0/I) 低質量原始星天体について、原始星と円盤構造の質量を評価する。これにより、円盤形成初期における原始星と円盤の成長過程を系統的に追うことで、その共進化過程を検証する。これらの豊富なALMAデータの解析のため、大容量ストレージを措置する。 ALMAアーカイブデータの解析によってこれまでに見出している超低質量原始星候補天体 (Chamaeleon MMS1, IRAM 04191-IRS) について、高解像度・高感度のALMA観測を、昨年度に引き続き本年度の観測公募 (Cycle 8) で提案し、形成最初期にある円盤の物理環境の理解に繋げていく。
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Research Products
(3 results)