2019 Fiscal Year Annual Research Report
原始重力波を用いたニュートリノ質量獲得機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Exploration of Particle Physics and Cosmology with Neutrinos |
Project/Area Number |
19H05097
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
淺賀 岳彦 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70419993)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、素粒子物理の究極理論を構築するため、標準模型の抱える問題、ニュートリノ質量の起源と宇宙バリオン数の起源を同時に説明する理論を検討する。本研究では、シーソー機構によりニュートリノの極微質量を自然に実現する「右巻きニュートリノ」に着目し、この粒子を「原始重力波 」により検出する手法を検討する。 今年度は、右巻きニュートリノによる原始重力波スペクトルへの影響について研究を実施した。原始重力波は、インフレーション時の量子ゆらぎに起因した重力波である重力波スペクトルの各周波数域には、特異な物理現象に対応する宇宙時期の情報が刻まれる。右巻きニュートリノによる付加的エントロピー生成があると、宇宙進化、具体的には温度と時間の関係に大 きな変更を与え、重力波スペクトルに特徴的な歪みを与える。この歪みを定量的に評価することを目指した。 現在までに、右巻きニュートリノ崩壊による付加的なエントロピー生成量の評価、および重力波スペクトルに対する影響を評価する理論的枠組みを把握し、数値解析可能な定式化を終了した。そこで今年度については、初期段階の計算を実施し、その結果を日本物理学会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、本研究課題が目指す原始重力波によるニュートリノ質量起源の解明を目指し、その質量を説明する右巻きニュートリノによる重力波スペクトルへの影響を検討した。特に、原始重力波スペクトルの歪みを評価するために必要な基礎となる研究事項を完了した。第一に右巻きニュートリノ崩壊による付加的な宇宙エントロピー生成量を定量的に評価する方法を確立し、数値解析が実施できる環境を整えた。さらに、上記の付加的エントロピー生成が生じた時の原始重力波スペクトルの歪みがどのよう発生するかを把握し、数値解析を行える準備を整えた。その上で、初期段階の数値解析を実施し、原始重力波スペクトルの特徴的な歪みを見出し、その定性的な振る舞いを理解した。
上記に述べたように研究に着実な進捗があったため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方針としては、以下の2つの課題を遂行する。 第一の課題としては、右巻きニュートリノ崩壊による付加的な宇宙エントロピー生成による原始重力波スペクトルの歪みを定量的に評価する。この数値解析を実施することにより、右巻きニュートリノの質量の大きさや相互作用の強さにより歪みがいかに変化するかを見出す。 第二の課題としては、原始重力波の特徴的な歪みから右巻きニュートリノを検証する方法を検討する。重力波干渉計型検出器、宇宙背景輻射観測、およびパルサー観測など多様な宇宙観測による検出を検討する。特に、右巻きニュートリノの質量の大きさを判別する特徴的なシグナルを見出し、観測グループへ提言することを計画している。
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Research Products
(4 results)