2019 Fiscal Year Annual Research Report
Electron chirality in enantiomers and the generation of the homochirality by collision with cosmic rays and
Publicly Offered Research
Project Area | Exploration of Particle Physics and Cosmology with Neutrinos |
Project/Area Number |
19H05103
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬波 大土 京都大学, 工学研究科, 講師 (40431770)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ホモカイラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸分子が持つ電子カイラリティ非対称度をアラニン、セリン、バリンを対象に研究を行った。先行研究からは、スピン軌道相互作用の小ささから、周期表の第二周期までの元素だけからなる分子に対しては、通常の相対論的量子化学計算からは十分な精度で結果を得ることはできないとの結果が得られていた。通常の相対論的量子化学計算で使用する範囲を大きく超えた広がった関数の組(分散関数)を基底関数系に追加することにより、信頼できる電子カイラリティ非対称度の値が計算できることを発見した。その計算手法に基づいて、シンプルな構造を持つアミノ酸分子であるアラニン、セリン、バリンを対象に電子カイラリティ非対称度の計算を行った。その値は鏡像異性体分子のL体が正の値、D体は負の値であった。これは、L体には右巻き電子の方が多く、D体には左巻き電子の方が多いことを意味し、ニュートリノとの反応率はD体の方が大きいことを意味している。このことは電子カイラリティ非対称度がホモカイラリティを生み出す機構であることを支持する結果であった。 また、過去の研究から、電子励起により分子の持つ電子カイラリティ非対称度を著しく増幅させる可能性があると予言をしていた。これを確認するために、配置間相互作用法(CI法)による相対論的量子化学計算を過酸化水素(H2O2)を対象に行った。その結果として、4桁の電子カイラリティ非対称度の増幅が起こることを確認した。 太陽からのニュートリノとアミノ酸分子の相互作用が地球上のホモカイラリティを説明できるかを定量的に評価した。結果としては太陽ニュートリノでは十分な非対称を作ることはで着ないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画を大幅に超えた研究テーマはないが、特に遅れているテーマもなく、おおむね順調に研究が進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
この年度までの研究において、励起により分子の持つ電子カイラリティ非対称度は著しく増幅するとの予言を行っていた。この予言に基づき、鏡像異性体分子の励起状態におけるエネルギー差について研究をすすめる。最もシンプルな鏡像異性体分子であるH2X2 (X=O,S,Se,Te) について、EOM-CC-FFPT (Equation Of Motion-Coupled Cluster-Finite Field Perturbation theory)という高コストだが高精度の計算を行い、励起状態における鏡像異性体分子間のエネルギー差について調べる。 この年度の研究でアミノ酸分子、アラニン、セリン、バリンが持つ電子カイラリティ非対称性はホモカイラリティを生み出す機構が働くために必要なL体が正の値、D体は負の値という条件と合致していた。この計算はハートリー・フォック計算を行って示していたが、電子カイラリティ非対称度の計算はかなりの精度が必要であり、我々が行ったハートー・フォック計算では精度がぎりぎりであると考えている。そこで、密度汎関数法を用いてより高精度計算を行い計算の検証を進めたい。 研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点は特にない。
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