2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of nano-millfeil creation by hard and soft alternate particle layering and its origin of physical property enhancement
Publicly Offered Research
Project Area | Materials science on mille-feullie structure -Developement of next-generation structural materials guided by a new strengthen principle- |
Project/Area Number |
19H05118
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
藤森 厚裕 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00361270)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ・ミルフィーユ構造体 / 高分子粒子層 / 無機ナノ粒子層 / 交互積層 / 秩序 / パラクリスタル解析 / 粒子間架橋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、硬質層と軟質層が5 nmの周期で交互に積層された精密なナノ構造の作成を試みた。このような周期的に積み重ねられた構造は、Mg合金の系に提案された革新的な力学物性増強起源(LPSO構造)を解明するためのモデル材料として活用可能であると思われる。軟質層は、カルバゾール環と炭化水素鎖およびフッ化炭素鎖を含む三元共重合体で作られた高分子ナノ粒子の単粒子層である。硬質層は、マグネタイトナノ粒子でできた単粒子層であった。マグネタイトナノ粒子の表面は長鎖ジイン酸で修飾された。各単一成分の粒子層の多層は54%結晶性であり、約20 nmのD001結晶子サイズで秩序化されていた。硬質層と軟質層が1桁のナノ周期で繰り返されるナノミルフィーユ構造は、56%の結晶性であり、約15 nmのD001結晶子サイズで秩序化された。赤外吸収分光法とX線光電子分光法では、ハード層とソフト層の両方の損失は見られなかったた。厚み・層数を様々に変化させても、秩序性に顕著な減少は見られなかった。将来、この構造の機械的性質を直接評価するために、紫外線照射重合による粒子間の架橋を試みた。修飾鎖間のトポケミカル重合の後でも、粒子の積層構造の秩序は維持された。 上記成果は、1桁ナノメートル周期のミルフィーユ構造について検討されたものであるが、今回、2種類のサイズの異なるミルフィーユ構造の評価について検討を加え,比較を行った.そもそもLPSO構造はオングストロームレベルの構造であり,ナノミルフィーユよりも1桁小さい,そこで,結晶性フッ素樹脂のラメラ構造(数10 nm)周期に対しても,延伸配向によりミルフィーユ構造とキンク導入構造を形成させ,物性増強挙動を追尾した.加えて高分子/針状無機ナノフィラー複合材料についても延伸配向させ,ミルフィーユからキンク構造に至る上での力学物性増強挙動を追尾した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費申請課題として,当初計画通りに進行しているという点においては,ほぼ問題はないと考える.しかし,当該新学術領域における当該課題による貢献の点で,更なる試みを行い,その点において達成すべき目標が増加している.その点も踏まえて「おおむね順調な進行」と結論付けた.当該領域の目標は,LPSO構造/キンクバンド導入ミルフィーユ構造による革新的物性向上起源の解明と,その制御,更には高分子・セラミック材料への拡張,と理解している.Mg合金の系により解明され,他の金属材料に対しても拡張が図られているLPSO構造が,高分子材料においても普遍的に活用し得るか?の点において,当該研究における「ナノ・ミルフィーユ構造」提案による起源解明に加え,サイズの異なるミルフィーユ構造を導入して,比較・検討のタスクを課すことにした.金属材料の系ではオングストロームレベルにおける硬軟積層構造が形成されている.本課題で扱うのは,その1桁大きいレベルでの硬軟ナノ粒子の積層構造体であるが,更にもう1桁大きい10 nm周期の高分子のラメラ構造,更には数100 nm周期の層状構造を調整可能な延伸配向高分子/針状ナノフィラー複合材料について,検討を加えている.こうした「階層的な」ミルフィーユ構造の形成とその物性評価から,3種類のアプローチによって物性向上起源の解明に至る術は,順調でありながらも未だ複数の展開を検討しつつ進めるべき視点に於いて,更なる努力とアイディアが要求されると課題を掲げている. 尚,主テーマに関する検討に於いては,精密な構造モデルとしてのナノミルフィーユの創出には至ったため,その物性向上起源の解明に関わる,キンクバンドの導入や力学物性の系統的検討を次年度につなぐ方針である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,物性革新増強の直接の起源である,「キンクバンド導入」にフォーカスを当てて進行させる.この1年間で確立した,「ナノ・ミルフィーユ」構造体の秩序は,55%程度の結晶性,数100 nm直径の結晶子サイズで,5 nmの硬軟粒子層周期を有していた.キンクバンドの導入に於いては,下地層に面積の半面,2.5 nmの脂肪酸LB膜を導入し,その位相のずれを形成させる.これにより層間摩擦の影響から横方向に対する引張刺激に耐え得る構造/機能相関性を明らかにする.キンクバンド導入ナノミルフィーユを,延伸加工可能な樹脂基板上に製膜し,一軸延伸を施しながらその延伸倍率毎の構造の乱れや形態変化を,X線回折と原子間力顕微鏡観察により追尾する.この評価は常にキンクバンド未導入のミルフィーユ構造のみの状態と比較し,キンクバンド導入の効果を検証する. また,10 nm周期の全フッ素化結晶性樹脂に対する研究推進方策は,高温延伸により形成した,ラメラ並行配列状のミルフィーユ構造と,高倍延伸により形成させたヘリング・ボーン状のキンク構造に対して,それぞれ定量的な引張試験による力学試験を行う.加えて数100 nmスケールのミルフィーユ構造に相当する高分子/針状ナノフィラーナノ複合材に対し,延伸配向を施す検討を継続する.中程度の延伸で,針状ナノフィラーを層状に配列させ,更に高倍延伸でキンク構造を導入する.これを引張試験と電子顕微鏡観察で物性/構造の双方から評価を行って,サイズの異なる3種の階層的ミルフィーユ構造に対して物性構造挙動を確認する. 以上の取り組みから高分子材料系におけるLPSO構造由来の物性向上のエビデンスを得,その機構と起源の解明を試みる.
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Research Products
(52 results)