2019 Fiscal Year Annual Research Report
Mobility Control of Kink-boundaries and Strengthening by GN Dislocation array
Publicly Offered Research
Project Area | Materials science on mille-feullie structure -Developement of next-generation structural materials guided by a new strengthen principle- |
Project/Area Number |
19H05134
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
鈴木 真由美 富山県立大学, 工学部, 教授 (20292245)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | GN転位列 / キンク界面 / 転位密度 / 圧縮強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本実験で用いた供試材は本新学術領域研究における共通試料であるMg85Zn6Y9鋳造多結晶材である.多結晶材を用いた場合,内部の結晶方位はランダムであるため,キンクの分布等が変化し,より均一にキンクが導入されると期待できるため,キンク内部のSS転位のGN転位化や,キンク界面の易動度を検討できる可能性がある.この素材に対し,室温下で定速圧縮試験を行い,0~10%の予ひずみを与えることで材料内部にキンクを導入した(予ひずみ材).一部の試料には熱処理を施し,組織観察ならびに室温での力学的特性(硬さ,圧縮強度)の調査を行った. 予ひずみを付加することでLPSO鋳造多結晶材試料内部にはキンク界面が不均一に導入された.予想と異なり局所的なキンク密度はDS材に比べて高く,また多重化する傾向があった.そのため,多結晶材で導入されたキンク帯の易動度は極めて低く,応力に対するキンク帯の移動度を本共通試料で検討するのは困難であることがわかった. 5%予ひずみ材に750 K 24hの熱処理を施したところ,キンク界面の様相が変化すると同時に内部の転位密度が低下し,キンク領域が緩和していることがわかった.一方で,650K 24hの熱処理後の組織では,GN転位列に似たコントラストが観察された.予ひずみ材および熱処理材のビッカース硬度を測定したところ,熱処材の平均硬度は予ひずみ材に比べてごく僅かに増加したものの,室温圧縮強度は殆ど変わらず,DS材とは異なる傾向を示した.更に5%予ひずみ材に対して650K 24hの熱処理を施すと,応力負荷に伴い,多くのクラックが導入され,硬さならびに室温圧縮強度が明らかに低下した.このことから,LPSO鋳造多結晶材においてはGN転位列による強化は室温では小さく,キンク界面の安定化による影響が高いものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は塑性ひずみの付与・熱処理時に伴って形成するGN転位列を中心とした組織変化と強度への影響に関する検討を行った.その結果,多結晶を用いた場合,キンク界面の可逆的移動の検討が難しいことが明らかとなった.この結果は次年度実施予定の計画に反映可能である.また,GN転位列を導入するためには,ある程度低い予ひずみ量,あるいは熱処理温度を低下させる必要があることが明らかとなったため,GN転位列の導入や分布の制御に反映できるものと考えられる. 更に,熱処理を行うことで一旦導入されたキンク帯領域の緩和と,それに伴う強化の可能性を見出すことができた.一方で,緩和の程度が十分でない場合,キンク帯あるいはキンク帯周辺の塑性変形領域(GN転位列を含む)の存在は材料の早期破断や弱化を引き起こす可能性があることもわかった. この結果は研究開始時には予想していなかった結果であったが,この検討を進めることで,キンク強化の発現条件を明らかにするなど,キンク強化について新たな知見が得られると考えられる.そのため,当初の実験計画にない項目であるが,更に検討を進める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
計画書の通り,薄帯試験片によるキンク界面の繰り返し変形下での可逆的移動と擬弾性特性に関する検討を行う.多結晶材が適していないことが2019年度の結果より判明したため,一方向凝固材を用いた検討を行う予定とする.本件について,移動や擬弾性が発現しなかった場合は,GN転位列の導入に伴うキンク制御の検討を計画書通りに行う.現状,キンク帯が極めて材料内部に不均一に導入されることが課題であるため,低ひずみ増分での多軸加工などを用いて,組織の改善を試みる予定である. また,前年度に見出された多結晶材の予ひずみ負荷と熱処理に及ぼす強度と組織の影響の調査を継続し,キンク強化の発現条件を明らかとする. 研究量が増加するため,当初1名の研究協力者(学生)を2名に増加し,研究を行う.
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