2019 Fiscal Year Annual Research Report
多様な純金属層状構造によるキンク強化に適した材料設計指針の探索
Publicly Offered Research
Project Area | Materials science on mille-feullie structure -Developement of next-generation structural materials guided by a new strengthen principle- |
Project/Area Number |
19H05135
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
光延 由希子 (小川由希子) 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 研究員 (70814268)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 層状構造 / スパッタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
LPSO型Mg合金の強化機構に、硬質層と軟質層の層状構造を持つLPSO相でのキンク形成が寄与することが分かってきており、「硬/軟質層の層状構造(ミルフィーユ構造)におけるキンク強化」を新たな強化機構と捉え、幅広い材料への展開が試みられている。そこで、本研究では、スパッタリングにより、様々な純金属を用いて層状構造を作製し、各結晶構造において、キンク強化に有効な硬/軟質層の層間距離や両層の硬度差といった層状構造構成因子およびキンク形成時の応力負荷方向や積層方向と強度の関係を明らかにし、キンク強化を新しい強化法として他の材料に広げるための基礎的知見を得ることを目的とした。なお、今年度は、8月より産前・産後休暇および育児休業により研究を中断するため、採用後~7月までの結果の概要を以下に記す。 今年度は、主にhcp構造同士の層状構造について、その作製条件の決定および密着性の評価を行った。まず、積層させる金属としては、MgとTiを選択した。既報の二元系状態図によると、両者は互いにほぼ固溶せず、かつ化合物を形成しないためである。各純金属ターゲットを用いて、様々な出力および成膜時間にて成膜し、島状ではなく、地続きで均一な薄膜が形成されるとともに、nmオーダーで制御が可能な成膜条件を決定した。また、Mg上のTi薄膜およびTi上のMg薄膜の密着性をテープテストにより、評価したところ、いずれの場合においても全く剥離がみられず、両者は高い密着性を有することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度8月より産前・産後休暇を取得後、続けて育児休業のため、7月で研究の中断手続を行った。このため、採用後~7月までの進歩状況を以下に報告する。 今年度の研究計画の一段階目は、層状構造をなす金属の密着性評価を行い層状構造の作製に適切な金属の組み合わせを調査することであった。そこで、まず、hcp構造同士の層状構造について、その作製条件の決定・密着性の評価を開始した。hcp構造を持つ金属同士の二元系状態図を調査し、互いに固溶せず、化合物も形成しないと推測される組み合わせとして、MgとTiを選択した。次に、各純Ti, Mgターゲットを用いて、様々な出力・成膜時間にて成膜し、均一な薄膜が形成されるとともに、nm単位で制御が可能な成膜条件の探索を行った。ここで、基板は純Ti板とし、実際に層状構造を作製した際と同一状況にて評価するため、Mgは基板上、Tiは基板上に成膜したMg薄膜(約1μm)上に各々成膜した。成膜時の出力は、10 ~ 50 W、時間は5 ~ 30分とした。まず、純Ti基板上へMg薄膜を成膜したところ、出力10 W, 成膜時間5分で既に50 nm程度成膜されていたことから、出力は10 Wに決定した。また、時間を変えて成膜を行い、成膜時間と膜厚はほぼ線形関係にあり、時間の調整により膜厚の制御、すなわち層状構造の層間距離の制御が可能であることを確認した。ここで、膜厚測定には、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いた。同様にして、Mg薄膜上にTiを成膜し、その最適な出力を決定するとともに成膜時間により膜厚が制御可能であることを確認した。 純Ti基板上のMg薄膜, Mg薄膜上のTi薄膜の密着性を簡易的に評価するため、テープテストを行った。その結果、いずれにおいても全く剥離がみられなかったことから、両者は高い密着性を有し、MgとTiは層状構造をなす組み合わせとして適切であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果から、hcp構造同士の層状構造については、MgとTiが適切な組み合わせの一つであることが確認できた。そこで、今後は、成膜時間の制御により、MgとTiからなる、様々な層間距離を持つ層状構造を作製し、層間距離とキンク形成の有無を調査する。キンクの導入にあたっては、圧縮試験や曲げ試験を用いる。また、層状構造をなす両層の硬度比とキンク形成の有無についても調査するため、hcp構造同士の適切な組み合わせとしてMgとTi以外を探索する。次に、同様の方法で、fcc構造同士, bcc構造同士, hcp/bcc, bcc/fcc, fcc/hcp構造の組み合わせについても探索を行い、層間距離および硬度比とキンク形成の関係を評価する。更に、適切な組み合わせにて作製した層状構造において、キンク形成時の応力負荷条件がキンク形成および形態に与える影響を調査する。加えて、キンクが形成された際に、積層方向に対して強化される方向や積層方向に対してどの方向に応力を負荷すれば強化に有効なキンクが形成されるのかといった調査を行う。
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