2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on kink structures of phyllo silicates at the atomic scale
Publicly Offered Research
Project Area | Materials science on mille-feullie structure -Developement of next-generation structural materials guided by a new strengthen principle- |
Project/Area Number |
19H05138
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
奥村 雅彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (20386600)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | キンク構造 / 粘土鉱物 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
層状物質におけるキンク構造はあらゆる長さスケールで見られる構造であり、層状物質の一つである粘土鉱物も例外ではない。粘土鉱物のキンク構造は、初め可逆的なキンク構造を形成し、それが発展することによって不可逆的な構造変化が起こり、永続的キンクバンドと呼ばれる構造が形成されることが知られている。しかし、この永続的キンクバンドの原子スケールの構造は明らかになっていない。そこで、本研究では、密度汎関数法を用いて永続的キンクバンドの原子スケールの構造を調べる。 今年度は、粘土鉱物の一層を対象として、曲げの力がかかって折れた場合の構造変化を評価した。具体的には、葉蝋石(pyrophllite)の一層をモデル化し、中央の原子の位置を固定して両端の原子を少しずつ動かして構造最適化を繰り返すことによって曲げの力をかけ、破壊が起こるまで曲げ続ける操作を続けた。その結果、曲げる方向に対する原子構造の違いによって、完全にぽっきり折れてしまう場合と、原子の結合がずれて曲がった原子構造をとる場合があることがわかった。これらの構造ができた後にさらに曲げの力を加え続けた際の曲げの角度に対して、前者はほとんどエネルギーの上昇がなかったが、後者はエネルギー曲げの角度が増えるに従ってエネルギーが上昇した。 これらの結果から、永続的キンク構造の原子スケール構造には2種類存在し、一つは完全に折れてしまう原子構造、もう一つは結合が変化した原子構造である。これらの原子構造を明らかにしたのは本研究が初めてである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
密度汎関数法は計算コストが高いため、最初は小さなモデルで計算を始めたが、力をかけた場所とは別の場所の原子構造が変化してしまい、モデルのサイズが小さすぎることが分かった。モデルの大きさを変化させて計算を実施したが、大きな構造であるため計算に時間がかかった。また、今年度の曲げの力のかけ方に対応する実験が存在するが、自然界では一点に力が集中する状況は稀であると考えられるため、自然界で見られるキンク構造の解析のためにはより自然な状況に対応するモデル及び計算方法を考える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
より自然に力が加わるようなモデルを構築し、計算を実施する。具体的には、今年度の試みのように一点に力をかけるのではなく、粘土鉱物の層に垂直方向から圧力が加わるようなモデルを作り、原子スケール構造の変化を評価する。今年度のモデルよりも大きなモデルの計算が必要となるため、密度汎関数法ソフトウエアの並列化パラメーターの最適値を注意深く探索するなどの工夫を実施し、計算を成功させる。
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