2019 Fiscal Year Annual Research Report
対相関が引き起こす原子核の新型巨大共鳴状態の探索
Publicly Offered Research
Project Area | Clustering as a window on the hierarchical structure of quantum systems |
Project/Area Number |
19H05143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堂園 昌伯 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (60616259)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 対相関 / 対振動 / 巨大共鳴 / 対移行反応 / クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
対相関は原子核における最も重要な相関の一つであり、その構造や集団ダイナミクスに強い影響を及ぼす。このような例のうち、巨大対振動(GPV)は、対相関が引き起こす全く新しいタイプの巨大共鳴状態として、約40年に渡って理論的に着目されてきた。しかし、これまで実験的な情報は皆無に等しく、特に中重核での発見・確定が望まれている。本研究の目的は、新反応プローブ「(4He,6He)反応」を活用し、超流動状態の原子核として知られているSn安定同位体でGPVの存在を確定することである。これにより、GPVの未知の性質をはじめて明らかにする。 本年度の研究実績は以下のとおりである。 (1) 歪曲波ボルン近似計算による(4He,6He)反応の反応機構の研究 歪曲波ボルン近似(DWBA)計算を用い、(4He,6He)反応の反応機構について調べた。その結果、6He内の中性子対の弱束縛性が反応の際の運動学的条件を向上させ、従来の(p,t)反応に比べて、高励起エネルギー領域に存在するGPVを高効率で励起させることが分かった(DWBA計算によると効率は一桁以上あがる)。 (2) 実験の検討と実施 (1)の計算結果をもとに(4He,6He)反応の実験の検討を行った。しかし、当初予定していた実験施設(阪大RCNP)の事情(改修工事の予期しない延期)により、期間内に実験ができないことが判明した。そこで、実験施設を東北大CYRICに変更し、これに伴い実験計画の再検討を行った。セットアップの設計・製作や標的・データ収集系などの準備を経て、東北大CYRICにて120Sn標的に対する(4He,6He)反応のデータを取得することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は阪大RCNPで実験を遂行する予定だったが、施設の事情により期間内での遂行が不可能になったため、施設の変更(東北大CYRIC)を行った。これに伴い、実験計画の再検討やセットアップの変更を行い、遅延が生じた。この遅延に合わせて、繰越により事業の完了時期を延長することにした。最終的に目的のデータを取得することには成功したが、上記の理由により、進捗状況の区分は(3)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
時期は遅れたものの、目的のデータを取得することに成功した。今後はデータ解析に集中する。解析環境は全て揃っているため、短期間で結果を出せると考える。
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