2019 Fiscal Year Annual Research Report
動的な殻構造形成とクラスター形成
Publicly Offered Research
Project Area | Clustering as a window on the hierarchical structure of quantum systems |
Project/Area Number |
19H05145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 孝治 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (20201379)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アルファ粒子 / クラスター / ベリリウム / 炭素 / ホイル状態 / 自己組織化 / 殻模型 / エルビュウム |
Outline of Annual Research Achievements |
原子核におけるクラスター形成がどのような原子核で、どのような構造を伴って起こるのかを、量子色力学から得られる最先端の基本的な核力を用い、全ての核子を活性化して実行される大規模殻模型計算の結果を活用して解明するのを目的としてきた。そこで得られた固有状態の波動関数に含まれるクラスター構造を解析する方法を開拓し、実際に適用して実効性を証明した。ベリリウムー8、10の原子核については従来より行なっていたが、本年度に於いてはその方法の妥当性を証明することに成功し、96~99%という高いレベルで妥当性が示された。これは回転バンドの内部固有状態を用いる方法である。さらに、今年度に於いて大きな進展を見たのは、炭素12のようなアルファクラスターが3個の場合に、密度分布からクラスター構造を引き出す方法を見出したことにある。同じ炭素12の原子核の中でも、基底状態と励起状態であるホイル状態ではクラスター構造が変わっていることも示し、前者では極めて小さな成分がクラスターに対応し、後者でも完全にクラスターではないことを示した。 殻模型計算による研究の一環であることを生かして、動的な殻構造の変化との関連を、量子自己組織化の観点も取り入れて解明することも行なった。その結果、例えば、A. ボーアらによる原子核のガンマ振動モデルは基本的に間違っており、その典型例とされたエルビュウム166原子核の基底状態バンド、ガンマバンド、いわゆる二重ガンマバンドが全て、角度ガンマの値にして10度くらいの3軸非対称変形状態として説明できることを詳しく議論した。ボーア模型や束縛条件付ハートリーフォック法を用いて多面的に分析した。さらに、別の研究課題として、原子核のドリップラインの決定メカニズムとして、原子核表面の球からの変形を起こす変形エネルギーの増減が重要であることも示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染のために国内外の共同研究や研究成果の発信が大幅に遅れている。炭素12のホイル状態におけるクラスター構造を深く解明するために国外の専門家と議論する機会がなくなり、それが可能になるのを待っている。リモートではやりにくい作業である。また、国内の関連分野の専門家とも直接議論できる期間が極めて限られたので、十分には進められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染状況はあまり改善していないものの、可能な範囲での共同研究活動を進めつつ、活動が可能になった時点で直ちに予定されていた共同研究や打ち合わせを実行に移したい。 研究の具体的な方策としては、クラスター構造を計算結果から抽出するための密度分布の計算方法をさらに改良して、特に炭素12原子核のホイル状態に於いて何がクラスター構造を引き起こすのかを究明する。 並行して、重い原子核での原子核表面の形の球からの変形が、軸対称楕円体ではなく、3軸非対称変形の方がむしろ多数派であることを、核力のモノポール成分による自己組織化などの効果として、実証する研究を推進する。 これらの研究をまとめ上げていくことにより、原子核の量子多体構造の理解に対し、従来のものに含まれる誤りや不十分な要素を取り除いて、より正しく、適切なものに取り換える大きな事業に貢献したい。
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Research Products
(6 results)