2019 Fiscal Year Annual Research Report
スパッタおよび加工熱処理によって作製したハイエントロピー合金の電気特性
Publicly Offered Research
Project Area | High Entropy Alloys - Science of New Class of Materials Based on Elemental Multiplicity and Heterogeneity |
Project/Area Number |
19H05168
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮嶋 陽司 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (80506254)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハイエントロピー合金 / 電気特性 / 材料組織 / 転位密度 / 電気抵抗率 / 力学的性質 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の金属材料は母相の中に少量の合金元素を添加することで高強度化を図ってきた.しかしながら,近年,5種類以上の元素をほぼ等原子量用いる事で作製が可能なハイエントロピー合金という材料が,従来とは全く異なる強化機構を示すことから注目を集めている.更に,ハイエントロピー合金は力学特性を中心に調査がなされてきたため,電気特性はほぼ明らかになっていない.本研究では,ハイエントロピー合金の力学特性に加えて電気特性を明らかにすることを目的としている. 本研究では,典型的なハイエントロピー合金として,Cantor合金と呼ばれるCoCrFeMnNi 等原子量合金に対して冷間圧延を施した.力学特性,電気特性および材料組織の圧下率の増加に伴う変化を調査した.その結果,従来報告されている純Niの冷間圧延に伴う材料組織の変化とは異なる組織発達過程を示すことが判明した.しかしながら,力学特性の変化は純Niと同様に,圧下率の増加に従って強度が徐々に増加していくことが分かった.また,電気特性は純Niの様に,組織変化に対応して単純に増加するわけではないことが判明した.これは,ミディアムエントロピー合金として扱うこともあるNi基超合金と似た性質であった.これは,SEM/EBSDレベルでは測定できないナノレベル・原子レベルの構造が電気特性に影響を与えていることを示唆している.この結果は日本金属学会講演大会で発表された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は典型的なハイエントロピー合金として,Cantor合金(CoCrFeMnNi 等原子量合金)を用い,冷間圧延を最大で80%まで施した.各圧下率における試料の力学特性,電気特性を測定し,材料組織観察をSEMおよびEBSDを用いて行った.その結果,従来報告されている純Niの冷間圧延に伴う力学特性の変化に近い強度の変化を示すにも関わらず,電気特性は順Niと異なって単調増加しないことが判明した.材料組織観察結果より,純Niとは異なる組織発達過程を示すことが判明したが,これは積層欠陥エネルギーが異なるためだと考えられる.今回測定された電気特性は,ミディアムエントロピー合金として扱うこともあるNi基超合金と似た性質である事が判明し,従来の希薄合金系の材料とは異なる性質を持つことが判明した. 上記実験と並行して,スパッタ装置の設計・製作を行った.すでに真空チャンバーの作製は終了しており,今後はスパッタ銃と電源,真空ポンプの取り付けを行い,実際にスパッタを用いて作製されるCantor合金の力学特性および電気特性の測定を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
すでにCantor合金に対して冷間圧延を施しているが,今後はその試料に対して種々の条件で熱処理を行い,力学特性および電気特性がどの様に変化するかを明らかにしていく.特に,SEM/EBSDレベルでの組織観察では検出できないナノレベルの構造が電気特性に影響していることが強く示唆されているため,今後はその部分を中心に研究を推進する. また,作製途中であるスパッタ装置の完成を急ぎ,スパッタによって作製されるナノ結晶組織を持つCantor合金の力学特性および電気特性を明らかにする.
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