2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of new high-entropy alloys for metallic biomaterials and the relationship between microstructure and biocompatibility
Publicly Offered Research
Project Area | High Entropy Alloys - Science of New Class of Materials Based on Elemental Multiplicity and Heterogeneity |
Project/Area Number |
19H05172
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永瀬 丈嗣 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 准教授 (50362661)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ハイエントロピー合金 / 生体合金 / 合金設計 / 凝固組織 / 状態図 |
Outline of Annual Research Achievements |
未開の多成分系状態図の中央近傍の化学組成を持つハイエントロピー合金では、面心立方構造(Face-Centerd-Cubic structure, FCC構造)、体心立方構造(Body-Centerd-Cubic structure, BCC構造)、あるいは六方最密充填構造(Hexagonal-Closed Packed structure, HCP構造)といった単純な結晶構造を有する高濃度固溶体合金が形成される。ハイエントロピー合金の中でも、等原子組成比TiNbTaZrMo生体ハイエントロピー合金は、生体適合性が純Tiに匹敵しその強度が鋳造ままでも既存の生体合金をはるかに凌駕する優れた特性を示すことが明らかとなっている。しかし、現時点において、生体ハイエントロピー合金が卓越した生体適合性と力学特性を両立する理由については、未解明のままである。とりわけ、生体適合性を支配する「生体ハイエントロピー合金と細胞の相互作用」については、その知見は皆無に近い。本研究では、「生体ハイエントロピー合金と細胞の相互作用」を明らかとするため、Ti-Nb-Ta-Zr-Mo合金における固溶体形成傾向および生体適合性の組成依存性に注目した研究を実施した。 Ti-Nb-Ta-Zr-Mo合金は、等原子組成比合金だけではなく、Ti・Zrを増加させた非等原子組成比合金、Nb・Ta・Zrを増加させた非等原子組成比合金のいずれにおいても、高い固溶体形成傾向を示すことが見いだされた。さらに、Ti・Zrを増加させた非等原子組成比合金の生体適合性は、等原子組成比合金に匹敵する高い特性を示すことが見いだされた。この知見により、生体ハイエントロピー合金の高い生体適合性は、等原子組成比のみで発現する特徴ではないことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ti-Nb-Ta-Zr-Mo生体ハイエントロピー合金における固溶体形成傾向が、経験的なハイエントロピー合金パラメーターおよび熱力学的計算により予測可能であることが明らかとなった。Ti-Nb-Ta-Zr-Mo生体ハイエントロピー合金の鋳造材は、等原子組成比合金・非等原子組成比合金のいずれも等軸デンドライト組織を形成し、特にTi・Zrがデンドライト樹間に偏析する特徴があることが明らかとなった。さらに、Ti・Zrの偏析傾向は、熱力学計算により算出された分配係数でよく説明できることを見出した。これらの結果から、Ti-Nb-Ta-Zr-Mo生体ハイエントロピー合金鋳造材の構成相・組織について、単に固溶体形成を予測するだけではなく、凝固組織の制御をも可能とする合金設計手法を開発した。 構成相・凝固組織を制御した等原子組成比合金、非等原子組成比合金を用いて、Ti-Nb-Ta-Zr-Mo生体ハイエントロピー合金の生体適合性におよぼす組成の影響を調べ、Ti・Zrを増加させた非等原子組成比合金が優れた特徴を示すことが明らかとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
Ti-Nb-Ta-Zr-Mo合金系のみではなく、新たな合金系の探索に着手する。合金系の探索は、単純な経験的なハイエントロピー合金パラメーターのみではなく、熱力学的計算を駆使することで高い固溶体形成傾向を示す合金を設計する。固溶体形成傾向のみではなく、生体合金に必要不可欠である室温延性を示す合金の開発を進める。Ti-Nb-Ta-Zr-Mo合金系・新開発合金系を含む多くの合金系における生体適合性を評価することで、「生体ハイエントロピー合金と細胞の相互作用」に関する知見を得ることを試みる。 生体ハイエントロピー合金の設計手法は、単に生体ハイエントロピー合金にとどまらず、さまざまなハイエントロピー合金の設計に有効であることが明らかとなりつつある。本研究により開発した設計手法を、より多くの合金系に適用することで、固溶体形成傾向のみならず機械的性質や生体適合性をも予測することが可能な、新規な合金設計法の開発を進める予定である。
|