2019 Fiscal Year Annual Research Report
High-entropy hydrogen absorbing alloys with tunable chemical equilibrium
Publicly Offered Research
Project Area | High Entropy Alloys - Science of New Class of Materials Based on Elemental Multiplicity and Heterogeneity |
Project/Area Number |
19H05175
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
秋葉 悦男 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 特任教授 (90356345)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ハイエントロピー合金 / 水素吸蔵合金 / BCC相 / Laves相 / Multi-principal element |
Outline of Annual Research Achievements |
ミディアムエントロピー合金であると共に現状において室温で作動する最も水素吸蔵量の大きい材料であるTi-V-X系BCC固溶体水素吸蔵合金を創成しそれを発展させた経験を踏まえて、四元素系のハイエントロピー水素吸蔵合金Ti-V-Cr-Xを作成した。第四元素としてMn, Zr, Nb, Mo, Fe, Co, Ni, Alを選択し、これらの一つにTi, V, Crを加えた四元素を等モル含む合金を作成した。合成した合金の内、TiVCrMn, TiVNbCr, TiVCrNi, TiVCrMo, TiVCrAl および五元素を等モル含むTiVCrNbMoは、X線回折測定によりBCC単相であることを確認した。また、複数の相を含むTiVCrZr, TiVCrFe, TiVCrCo合金においても主相はBCC相であった。従って、これらの混相の合金においても等モルから僅かにずれた組成に調整することや等モル組成のままで熱処理などの操作によってBCC単相を得ることができる可能性がある。水素雰囲気下DSC測定により作成したBCC合金の水素吸蔵特性のスクリーニング評価を行ったところ、ほとんどの合金が容易に水素を吸蔵および放出することを確認した。 一般にハイエントロピー合金は固溶体を言う場合が多く本研究でもBCC固溶体水素吸蔵合金を対象としているが、AB2組成を有する金属間化合物であるLaves相合金もBCC相と共に水素吸蔵性に優れている。そこで、ハイエントロピー合金からMulti-Principal element 合金へと水素吸蔵合金の開発の展開を目的にAB2組成を目標組成として、軽量なTiを主成分とする二つのA元素と遷移金属四元素を等モル含むB元素による六元素を等モル含む合金を12種作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ti系の軽量なBCC構造を有する新規合金の創成とそれらの合金の水素吸蔵性の評価を行い。六種の四元素系および五元素系のBCC単相の合金の創成に成功した。また、同時の試みた三種の合金においてもBCC相が主相であることから、熱処理や組成の最適化でBCC単相を得ることができる可能性を示唆することができた。本事業の目的の一つは新規なハイエントロピー合金の創成であるので、その目的に沿った合金の作成ができた。また、作成した合金の大半は水素吸蔵性を示したため、今後、水素吸蔵合金としての特性の詳細な評価を行う。 水素吸蔵合金としては固溶体の他、金属間化合物が1970年代から検討されてきた。Laves相(AB2組成をもつ金属間化合物)は優秀な水素吸蔵合金であることから、六元素を等モル含むLaves相合金を12種作成した。これは、水素吸蔵ハイエントロピー合金(あるいはMuti-Principan Element合金)を固溶体から金属間化合物へと展開することを目指したもので、来年度以降、作成した合金の水素吸蔵特性を含めた評価を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度において四元素系および五元素系でBCC固溶体単相が得られた合金について、水素吸蔵性が優秀である合金について水素吸蔵性を複数の温度で水素圧力組成等温線図測定により水素平衡圧力を測定して、反応のエントロピー変化およびエンタルピー変化を求め、ハイエントロピー合金における温度-水素平衡圧力の制御の可能性を確認する。 昨年度作成したLaves相組成の合金については、水素雰囲気下DSC測定により水素吸蔵特性のスクリーニングを行い水素吸蔵特性を評価する。水素吸蔵性に優れたものについては水素圧力組成等温線図測定を行い特性を詳細に調べる。 ハイエントロピー合金の効果としては、①高い配置エントロピーによる合金の安定性、②多数の元素によって形成された特殊な格子間隙間の活用、③拡散の制御、④カクテル効果が知られているが、合金の安定化はBCC相やLaves相の単相合金を得やすくすると共に水素化物の不安定化すなわち室温での水素吸蔵・放出を実現し、特殊な格子間隙間は占有する水素の安定性と挙動に関係があり、拡散の制御は水素の占有位置の局所化をもたらし、カクテル効果は劇的な水素吸蔵量の増加につながる可能性がある。これらの可能性については、①および④は水素圧力組成等温線図の測定で観測すると共に水素雰囲気下高圧DSCを用いた発熱量計測を行い水素雰囲気中での反応性などを評価する。 これらの測定に基づき、五元素系および六元素系かつ高い水素吸蔵特性を有するハイエントロピー水素吸蔵合金の創製に継続して取り組むと共に成果を論文として公表し、また複数の国際学会において発表する。
|