2019 Fiscal Year Annual Research Report
Atomic stress distribution inside high entropy alloys: first principle local stress calculation
Publicly Offered Research
Project Area | High Entropy Alloys - Science of New Class of Materials Based on Elemental Multiplicity and Heterogeneity |
Project/Area Number |
19H05177
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
椎原 良典 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90466855)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 原子応力 / 第一原理計算 / ハイエントロピー合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハイエントロピー合金(High Entropy Alloy, HEA)の優れた機械的特性は,合金の強化機構の一つである固溶強化によると考えられているが,詳細は明らかでない.一般的な合金における固溶強化は,転位や積層欠陥等の格子欠陥と溶質原子近傍で生じる応力場の相互作用がその機構である.しかしながら,HEA では溶質原子と母相原子の区別がないため応力場の推定がなく,既存の固溶強化理論が適用できない.従来提案されている局所格子ひずみを見積もるための方策は,いずれも間接的であり,その有効性の根拠を論じる術がない.本研究では,申請者らが開発した独自手法である第一原理局所応力計算法を用いて,電子論から直接的に HEA内部の原子レベル応力場を明らかとすることを目的とする.また,個々の原子が持つ電子論的特性から応力場を解釈することを通して,応力場発現の電子論的メカニズムを明らかとする.今年度の研究においては,Cantor合金(CrMnFeCoNi)の構成元素からなる4元・3元・2元fcc合金について第一原理局所応力計算を実施した.また,bcc型HEA(MoNbVTaW)に対して第一原理局所応力計算を適用した. 結果として,fcc系合金において局所圧力と電荷移動の相関が確認された.これは近年の先行研究(異なる定義の局所応力(原子球近似による)を利用)においても観察されている.この相関を再現したことをもって,本研究で用いた局所応力計算法の妥当性を確認したものとした.一方で,bcc系HEA合金であるMoNbVTaWについては,fcc系での結果とは異なり,電荷移動との間に明確な相関を見出すことはできなかった.このことは,fcc系とbcc系の間に応力発現メカニズムの差異が存在することを示唆する可能性がある.結果の妥当性についてさらに検討を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の当初の研究計画においては,種々のハイエントロピー合金構造の作成と第一原理計算およびそのその局所解析を実施した.電荷移動量という局所量との相関が見られたため,当初計画通りに進行していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度においては,ハイエントロピー合金について原子応力解析を実施し,電荷移動との相関を見出した.想定通りの進展が得られたものの,2020年に同様の計算結果を論じた論文2件が他のグループから先んじて公表された.したがって,申請書の内容から方策を練り直す必要がある. 一つは,平均原子変位や原子ひずみなどの原子局所量との相関を整理していく方向である.格子ひずみを局所的に議論するために提唱されてきた値と原子圧力の比較を実施し,その物理的意味と妥当性を議論していく.もう一つは,更に不純物を挿入して圧力分布の変化を確認する方向である.原子サイズ異なる原子の添加により応力場が生じそれが結晶の振る舞いに影響するとする先行研究の仮説を,応力場の直接評価を通じて検証する.
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Research Products
(1 results)