2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of highly spin polarized lithium and oxygen radioisotope beams for the study of battery materials
Publicly Offered Research
Project Area | Toward new frontiers : Encounter and synergy of state-of-the-art astronomical detectors and exotic quantum beams |
Project/Area Number |
19H05191
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三原 基嗣 大阪大学, 理学研究科, 助教 (60294154)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 不安定核ビーム / スピン偏極 / 核磁気共鳴 / 電池材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
充電式電池として高い性能を示すリチウムイオン二次電池や、高い発電効率を有する燃料電池は、広範囲で実用化が進んでおり近年その重要性はますます高まっている。次世代型電池として全固体リチウムイオン電池や固体酸化物形燃料電池が注目されており、高性能化に向けては高イオン伝導体材料の出現が望まれている。本研究では、電池材料評価の重要な指標となるイオン拡散係数測定に利用可能な、短寿命放射性核 8Li および 19O の高偏極・高強度ビームの新しい生成法を開発し、これらを用いて、ベータ線検出核磁気共鳴 (β-NMR) 法による電池材料中のリチウムイオンや酸素イオンの拡散係数測定を行うことを目的としている。 2019年度は、放医研の重イオンシンクロトロン加速器 HIMAC 施設にて、高エネルギー 18O ビームの中性子ピックアップ反応による、スピン偏極 19O ビーム生成試験を行った。その結果、偏極度約10%と高偏極で、かつ高強度な 19O ビームの生成に成功し、今回新たに開発した手法が、酸素 NMR プローブ 19O の供給法として有望であることが示された。このビームを用いて、高い酸素イオン伝導率を示し燃料電池の電解質材料として利用されている、イットリア安定化ジルコニア (YSZ) など、様々な酸化物結晶中における 19O のスピンー格子緩和時間 (T1) のデータも得られた。T1 はイオンの動的性質を反映し、拡散係数導出において鍵となる物理量である。 酸素は、地球上に豊富に存在し大変重要な役割を担う元素であるが、NMR 観測可能な安定同位体 17O の天然存在比が非常に小さいことが、従来の NMR 分光法による研究を阻む要因となっていた。本研究の放射性同位体を利用する手法を確立することにより、酸素核の NMR 分光に新たな道が開けると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HIMAC で供給される核子当たり 70 MeV の高エネルギー 18O ビームを Be 標的に入射させ、標的核から中性子をひとつくっつける中性子ピックアップ反応を利用することにより、スピン偏極 19O ビームの生成を試みた。β-NMR 測定効率の指標となる figur of merit は、偏極の2乗 × 収量で表される。この値が出来る限り大きくなるよう、19O の出射角度の条件探索を行った結果、約10%という高い偏極度をもつ 19O ビームの生成に成功した。ピックアップ反応については、過去の他核種における研究で高偏極が観測されており、今回の結果は期待通りであった。また、ピックアップ反応は、運動学的に生成核の収率が高く、かつエネルギー幅が狭いため、高強度でエネルギーの揃った偏極ビームの生成に適している。β-NMR 法ではビームを試料中に停止させて測定を行うため、この特徴は物質科学利用にとって大きな利点である。高エネルギービームにより容易に物質を貫通し、大気圧下での測定を可能とすることは装置の簡素化を助け、嫌気性や揮発性の試料でも密閉容器を利用できることは応用の範囲を拡げることに繋がる。 今回新たに開発した手法が、酸素 NMR プローブ 19O の供給法として有望であることが実証され、燃料電池材料を含むさまざまな酸化物結晶中の 19Oの T1 のデータが得られたことにより、今後の物質科学利用への展望が開けた。以上のことから、研究は概ね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、YSZ 中の19O の T1 の温度および静磁場依存性を測定し、19O イオンの拡散係数導出を目指す。試料温度を室温から数百 K の間で制御できるシステムの構築と動作試験を行ったのち、HIMAC で実験を行う予定である。 さらには、新しい方法として、低エネルギー核反応での逆運動学を利用した高偏極 8Li および 19O 生成試験を行う予定である。当初の計画では、こちらを行う予定であったが、使用する加速器施設の再検討と、装置の設計に時間を割いたため、2020年度から実験を行うことにした。低エネルギー核反応を利用する利点は、HIMAC と比較して小型の加速器施設を利用するため、長期的、継続的な研究が可能であることが挙げられる。筑波大学タンデム加速器施設で実験を行う予定である。装置作成には2019年度から取りかかっており、これを完成させて実験を行う。
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[Journal Article] In-beam Mossbauer spectra for 57Mn implanted sulfur hexafluoride2020
Author(s)
Y. Yamada, Y. Sato, Y. Kobayashi, T. Ando, N. Takahama, K. Some, M. Sato, M. Mihara, K.M. Kubo, W. Sato, J. Miyazaki, T. Nagatomo, J. Kobayashi, A. Okazawa, S. Sato, A. Kitagawa
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Journal Title
Hyperfine Interactions
Volume: 241
Pages: 15-1~6
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A new experimental method to search for T-violation using a sequential CeF3 scintillating calorimeter2019
Author(s)
S. Shimizu, K. Horie, Y. Igarashi, H. Ito, K. Kamada, S. Kimura, A. Kobayashi, M. Mihara, A. Yamaji, A. Yoshikawa
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Journal Title
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
Volume: 945
Pages: 162587~162587
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Beta-NMR of short-lived nucleus 17N in liquids2019
Author(s)
M. Mihara, T. Sugihara, M. Fukuda, A. Homma, T. Izumikawa, A. Kitagawa, K. Matsuta, T. Minaisono, S. Momota, T. Nagatomo, H. Nishibata, D. Nishimura, K. Ohnishi, T. Ohtsubo, A. Ozawa, S. Sato, M. Tanaka, R. Wakabayashi, S. Yagi, R. Yanagihara
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Journal Title
Hyperfine Interactions
Volume: 240
Pages: 113-1~9
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Muon spin relaxation after hydrogen absorption-desorption process in Pd2019
Author(s)
M. Mihara, H. Araki, K. Shimomura, W. Higemoto, M. Mizuno, K. Sugita, A. Kobayashi, M. Kondo, Y. Tanaka, Y. Kitayama, D. Tomono, E. Torikai, W. Sato, K. Ohkubo, R. Murakami, N. Matsuoka, I. Watanabe, T. Matsuzaki, R. Kadono, T. Nakano, T. Fukuda
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Journal Title
RIKEN Accel. Prog. Rep.
Volume: 52
Pages: 179
Peer Reviewed
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[Journal Article] ミュオンによるパラジウム中水素の吸蔵・放出過程における局所構造観察2019
Author(s)
三原基嗣, 荒木秀樹, 下村浩一郎, 髭本亘, 水野正隆, 杉田一樹, 小林篤史, 近藤雅史, 田中佑樹, 来山雄太, 友野大, 鳥養映子, 佐藤渉, 大久保寛治, 村上涼馬, 松岡直希, 渡邊功雄 松崎禎市郎 門野良典, 中野岳仁, 福田隆
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Journal Title
Proc. The Specialists' Meeting on Nuclear Spectroscopy and Condensed Matter Physics Using Short-Lived Nuclei V
Volume: KURNS-EKR-4
Pages: 43~46
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[Journal Article] πパルスによるH2O中17N の精密NMRスペクトル測定2019
Author(s)
三原基嗣, 松多健策, 福田光順, 南園忠則, 田中聖臣, 若林諒, 柳原陸斗, 杉原貴信, 大西康介, 八木翔一, 西畑洸希, 長友傑, 泉川卓司, 本間彰, 大坪隆, 西村太樹, 百田佐多生, 小沢顕, 北川敦志, 佐藤眞二
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Journal Title
Proc. The Specialists' Meeting on Nuclear Spectroscopy and Condensed Matter Physics Using Short-Lived Nuclei V
Volume: KURNS-EKR-4
Pages: 54~56
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[Journal Article] 物性プローブとしての高偏極不安定核ビーム生成法の開発2019
Author(s)
三原基嗣, 松多健策, 福田光順, 田中聖臣, 若林諒, 泉川卓司, 西村太樹, 百田佐多生, 西畑洸希, 長友傑, 小沢顕, 大坪隆, 南園忠則, 北川敦志, 佐藤眞二
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Journal Title
2018 Annual Report of the Research Project with Heavy Ions at NIRS-HIMAC
Volume: QST-R-13/HIMAC-147
Pages: 178~179
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[Presentation] 酸素 NMR プローブ核 19O の開発2020
Author(s)
三原基嗣, 松多健策, 福田光順, 若林諒, 沖本直哉, 福留美樹, 泉川卓司, 野口法秀, 生越瑞揮, 大坪隆, 西村太樹, Aleksey Gladkov, 北川敦志, 佐藤眞二
Organizer
令和元年度京大複合研専門研究会「短寿命RIを用いた核分光と核物性研究VI」兼「第11回停止・低速RIビームを用いた核分光研究会」
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[Presentation] 物性プローブとしての高偏極不安定核ビーム生成法の開発2019
Author(s)
三原基嗣, 松多健策, 福田光順, 南園忠則, 若林諒, 田中聖臣, 杉原貴信, 大西康介, 八木翔一, 西村太樹, 泉川卓司, 大坪隆, 本間彰, 小沢顕, 西畑洸希, 長友傑, 北川敦志, 佐藤眞二, 百田佐多生
Organizer
平成 30年度HIMAC共同利用研究成果発表会
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