2019 Fiscal Year Annual Research Report
New approach to astrochemical reaction dynamics by a high-precision superconducting X-ray calorimeter
Publicly Offered Research
Project Area | Toward new frontiers : Encounter and synergy of state-of-the-art astronomical detectors and exotic quantum beams |
Project/Area Number |
19H05195
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
久間 晋 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (50600045)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | X線検出器 / TES / イオン蓄積リング / 宇宙化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年計画で進めている本公募研究において、まず初年度は超伝導遷移端マイクロカロリメータ(TES)と極低温静電型イオン蓄積リング(RICE)のドッキング部分の開発に注力した。RICEは極低温および超高真空で動作する。TESは断熱消磁冷凍機ADRを用いて100 mKまで冷却される一方で、真空装置としては高真空領域にとどまる。そのため、1) 接続時にRICEの動作条件を満たすための差動排気システムの構築、2) 接続部における室温輻射によるTESへの影響を防ぐための4 K冷却システムの構築、の二つが解決すべき点である。 この二つを同時に解決するために、温度4 Kの電気冷凍機を内蔵した差動排気チャンバーをデザイン・製作した。RICE 自体は極低温であるが、その中性フラグメントを取り出す際にも利用するRICE用高真空排気チャンバーは室温である。TESへの熱輻射導入は、4 K冷凍機の1段目および2段目ステージに接続した2つの筒状輻射シールドにより防ぐことで阻止し、TESからRICEを見た際の視野角に直接に室温部が含まれないように製作した。また接続チャンバーからTES側へも筒状輻射シールドを延長し、TES冷凍機からの輻射シールドと擬似的に接続させた。これらのシールドおよび真空配管部の径を可能な限り小さくし、かつ接続チャンバーへも大容量ターボ分子ポンプを取り付けることで、差動排気によってRICEの通常運転が可能であることを確かめた。また現在条件を最適化している最中ではあるが、ADRによるTES動作温度までの到達も確認済みである。これにより次年度のRICEからの中性フラグメント検出による性能評価実験を進める準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で使用するTES検出器は、J-PARCやSpring-8でのビームタイム実験でも使用しているため、実際に本研究へ割り当てることのできる時間が制限されている。その中で、当初の予定にあったイオン源を用いたオフライン実験に取り組む時間を十分に確保することができなかった。しかし一方、次年度の本実験開始へ向けた真空系の構築および輻射遮蔽用セットアップは全て完了することができた。総じてここまで順調な進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、実際にイオン蓄積リングRICEに周回させた分子イオンからの生成粒子をTES検出器で観測し、X線検出器として開発されてきたTESの原子・分子に対するエネルギー分解能測定を行う。電子サイクロトロン共鳴イオン源およびレーザーアブレーションイオン源で生成した炭化水素イオン等をRICEに周回させ、TES接続ポートから掃き出すことでTESへ分子イオンビームを照射し、よく定義された入射エネルギー(10 keVの予定)の分子イオンに対するエネルギー分解能を明らかにする。またRICE周回イオンは、RICE内にわずかに存在する残留ガスとの衝突や、外部から照射したレーザーにより中性フラグメントを生成する。それらを同じくTES接続ポートから取り出すことで、中性フラグメントの検出を実施する。フラグメントは入射ビームとの質量比で決まる並進エネルギーを持って飛来するため、TESによるエネルギー測定により中性フラグメントの質量を明らかにすることが可能である。
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