2019 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of a monkey model of attention deficit disorder and comprehensive understnading an underlying mechanism at multi-layer levels
Publicly Offered Research
Project Area | Constructive understanding of multi-scale dynamism of neuropsychiatric disorders |
Project/Area Number |
19H05216
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
肥後 剛康 京都大学, 医学研究科, 講師 (10396757)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 霊長類 / 注意 / 前頭前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
「注意」は、無数の情報から必要な情報のみを選択する脳機能であり、霊長類で特に発達した高次脳機能である。その障害である注意欠陥多動性障害ADHDは、学業や仕事を含む社会活動全般に影響を及ぼすため、近年社会的関心が高くなっている。申請者は、これまでヒト注意制御において、腹外側前頭前野、特に前頭弁蓋部fOpが中枢であることを見出しており(Higo et al., PNAS, 2011)、本研究では、fOpによる注意制御を回路レベルで明らかにするため、侵襲実験が可能であり、ヒト脳と高い相同性を有するマカク属サルを用い研究を行っている。重要回路の同定には、回路を選択的に操作する技術が必要である。そこで、申請者は、まず、fOpと強い神経結合を持つ脳領野を特定するため、神経トレーサーCTBとウイルストレーサーをfOpへ注入し、神経解剖学的に検証を行った。結果、fOpは背外側前頭前野に強い神経投射があることを確認した。次に、シナプス情報伝達を遮断するタンパク質 (テタヌストキシン)を回路選択的、可逆的にfOp-背外側前頭前野間の神経投射に発現させる試みを行った。外科的AAV注入を行い、2ヶ月後に灌流固定を行い、摘出した大脳を免疫組織化学的に解析したところ、当該神経投射において投射特異的にテタヌストキシンが誘導されることを確認した。霊長類の大脳皮質におけるウイルスベクター2重感染による遺伝子発現制御の報告はまだ存在しないため、本研究の成果は霊長類の回路研究を国際的にリードすることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「注意」制御の回路メカニズム解明のため、申請者は、シナプス情報伝達を遮断するタンパク質 (テタヌストキシン)を回路選択的、可逆的に発現させる回路遮断技術の開発をマカク属サルにおいて試みている。具体的には、先ず、前頭弁蓋部fOp-下側頭回ITG間の神経回路にテタヌストキシンを回路選択的かつ可逆的に発現させるため、外科的AAV注入によって回路遮断技術を導入し、ドキシサイクリン投与、非投与での発現を神経解剖学的に検証した。結果、fOp-ITG間での高効率かつ強力なテタヌストキシン誘導は観察されなかった。そこで、fOpと強い神経結合を持つ脳領野を再度特定するため神経トレーサーCTBとウイルストレーサーをfOPへ注入し、神経解剖学的に検証を行った。結果、fOpと背外側前頭前野に強い神経投射があることを確認し、当該領野へアデノ随伴ウイルスベクター2重感染システムを導入することで、投射特異的にテタヌストキシンが誘導されることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当該領野へアデノ随伴ウイルスベクター2重感染システムを導入したのち、fOpに刺激電極を挿入し、電気刺激によって神経情報を発生させ、背外側前頭前野に設置した微小記録電極においてfOpから下降した神経活動を皮質脳波ECoG記録によって検証する。この実験をテタヌストキシン発現のon/offを切り替えるドキシサイクリン投与前後で行い比較検討することで、遮断が可逆的に行われているかを確認する。
次に、8種の形と色の図形を用いた「注意」評価課題を訓練したサルに、当該遮断技術を外科的導入後、fOpと背外側前頭前野に微小記録電極を設置し、課題遂行中に時空間解像度が最高である単一神経細胞活動、電場電位LTPの同時記録を行う。データ解析は、単一ニューロン発火タイミングやLFP周波数帯域の同期性に着目した時間周波数解析とfOp-背外側前頭前野間における電極間の情報の流れに着目した因果関係推定解析を行う。また、電気生理実験に前後して行動実験を行い、正答率や反応時間を記録する。阻害された神経活動と行動との関連を評価することで、注意を制御する神経回路と神経活動を同定し、注意欠陥発症メカニズムの多階層的理解を行う。
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