2019 Fiscal Year Annual Research Report
幼少期社会的経験が形づくる前頭前野-視床回路の同定
Publicly Offered Research
Project Area | Constructive understanding of multi-scale dynamism of neuropsychiatric disorders |
Project/Area Number |
19H05226
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
牧之段 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (00510182)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 幼若期隔離 / 前頭前野 / 視床室傍核 / 児童虐待 / 社会性 / オキシトシン / 自閉スペクトラム症 |
Outline of Annual Research Achievements |
幼若期隔離マウスでは前頭前野V層に存在する特定の興奮性ニューロンの機能が低下するが(Yamamuro et al, Cereb Cortex, 2018)、その内訳を検討したところ、前頭前野から視床室傍核もしくは橋に投射するニューロン機能が著明に低下することを明らかにした。本課題ではその2つのニューロン群の内、前頭前野から視床室傍核への興奮性入力の低下に注目し、幼若期隔離マウスの社会性障害は視床室傍核の機能低下によるとの仮説を立て、視床室傍核機能を化学遺伝学によって修正することで行動異常が改善するのかを検討している。視床室傍核には社会性を司る分子であるオキシトシンの受容体が高密度に発現しており、我々はこの受容体に注目している。視床室傍核におけるオキシトシン受容体陽性細胞の機能操作のみで社会行動を変容させることが可能であるとわかれば、現在、他のグループが遂行している自閉スペクトラム症へのオキシトシン効果を検討する臨床研究に橋渡しできる知見となる。 オキシトシン受容体発現細胞特異的にCreが発現するマウス(Oxt-Cre-GFPマウス,the Jackson Lab)を購入し、視床室傍核にAAVベクター(AAV-hSyn-DIO-hM4D(Gi)-mCherryもしくはAAV-hSyn-DIO-hM3D(Gq)-mCherry)を注入して、それらの安定した遺伝子導入を確認した。 また、4-8匹のマウス社会行動を長時間解析するシステム(AR-based Long-term Animals Behavior Observation-system;AR-LABO)を改良し、人口知能による解析を可能にした。本ツールを従来の3-chamber testに加えることで、マウス本来の社会行動をより複眼的に検討可能な系の準備が整った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していたオレキシン受容体CreマウスのCre発現がオレキシン受容体陽性細胞特異的でない可能性が危惧され、対象の分子を視床室傍核のオキシトシン受容体に変更したため、進捗がやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Oxt-Cre-GFPマウスとAAVベクターを用い、視床室傍核に分布するオキシトシン陽性細胞機能を化学遺伝学的に強弱させ、同細胞機能が社会行動に与える効果を検討する。方法は、3-chamber testと代表者らが開発したAR-LABOを用いる。同マウスの幼若期に隔離飼育をし、視床室傍核におけるオキシトシン受容体陽性細胞の活動をc-fos発現により確認して、幼若期隔離によって同ニューロン群の機能が障害されるのかを検証する。次に、Oxt-Cre-GFPマウスの視床室傍核にAAVベクター(AAV2-CAG-Flex-rabiesG)とCAV2-mCherryを注入し、視床室傍核のオキシトシン受容体陽性細胞に入力する投射元のニューロン群を同定し、前頭前野内のどの部位、層に分布するのか確認する。2020年度内の論文投稿を目指す。
|