2019 Fiscal Year Annual Research Report
卵母細胞に顕在する新規細胞質顆粒が担う原始卵胞の品質管理機構
Publicly Offered Research
Project Area | Ensuring integrity in gametogenesis |
Project/Area Number |
19H05247
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
加藤 譲 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (60570249)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | マウス / 卵巣 / 原始卵胞 / RNP顆粒 |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖幹細胞に依存しないとされる哺乳動物の卵子形成において、卵子はどのようにして継続的に産生されるのか?その答えを得ることは、卵子のリザーバーであり最も未成熟な卵胞である原始卵胞の卵胞成長活性化制御機構を理解することに他ならない。本研究は独自に見出した細胞質RNP顆粒の解析から、原始卵胞の卵胞成長活性制御機構の解明を目的とする。モデル生物としてマウスを用い、長期に渡る継続的な卵子産生機構の一端を明らかにすることを目指す。 本研究により、マウス原始卵胞において多数のP-body様の細胞質顆粒が見出された。興味深いことに、この顆粒は成長卵胞ではその数が著しく減少する。そこで、P-body様顆粒を可視化するDCP1A-EGFPマウスを用いて卵巣を透明化し、定量的画像解析により、顆粒の体積と卵母細胞の体積を計測した。その結果、P-body様顆粒の体積は卵母細胞の体積と負の相関を示すことが明らかとなった。 そこで、「P-body様顆粒が介するRNA制御は原始卵胞活性化に対し抑制的に働く」との作業仮説のもと、同顆粒の形成に必須のRNAヘリカーゼDdx6を卵母細胞特異的にノックアウトして検証を行った。その結果、1)Ddx6 KO卵母細胞ではP-body様顆粒が消失すること、2)異常に活性化した原始卵胞数が増加すること、3)原始卵胞が早発に枯渇し、不妊を呈すること、が明らかとなった。これらの結果は、当初の作業仮説を支持するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたDdx6ノックアウトマウスの解析が順調に進行しており、P-body様顆粒が原始卵胞活性化の抑制に関わることを支持する結果が得られた。一方、当初予定していたDDX6-mCherryマウスを用いた同顆粒の動態解析は、mCherryがartificalなaggregateを形成することが判明し、断念せざるを得なかった。しかし、新たに作成したDDX6-EGFPマウスは有効に機能し、DDX6の動態解析にも着手している。以上のことから、本研究は順調に進んでいると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の大きな柱は以下の3点である。 1) P-body様顆粒形成意義の解明:これまでの研究から、原始卵胞の活性化抑制にDDX6が関わることが明らかとなった。一方、P-body様顆粒の重要性は未だ明らかでない。そこで、同顆粒の形成に必須であるDDX6のディスオーダー領域を欠損したマウスを作成し、原始卵胞の活性化抑制における同顆粒の意義を解析する。 2) P-body様顆粒により制御されるRNAの同定から同顆粒が介する原始卵胞活性化の抑制機構の解析:DDX6-EGFPマウスを用いて免疫沈降・RNAシーケンスを行い、DDX6と結合するRNAを同定する。また、Ddx6ノックアウト原始卵胞において発現上昇する遺伝子を同定し、これらの比較から原始卵胞活性化に関わる候補遺伝子を抽出する。 3)P-body様顆粒を構成するタンパク質の同定及び同顆粒の動態解析:DDX6-EGFPマウスを用いて免疫沈降・質量分析を行い、DDX6と共沈殿するタンパク質を同定する。この時、ディスオーダー領域欠損DDX6変異体を対照として用いることで、顆粒に局在するタンパク質の絞り込みを試みる。
|
Research Products
(5 results)