2019 Fiscal Year Annual Research Report
Real-time and real-space imaging of chromatin dynamics
Publicly Offered Research
Project Area | Chromatin potential for gene regulation |
Project/Area Number |
19H05257
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
柴田 幹大 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (80631027)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 1分子イメージング・ナノ計測 / クロマチン動態 / 超分子複合体 / バイオイメージング / 一分子計測・操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命の根源である遺伝子発現やゲノム機能の調節には、クロマチン構造の動的変化、つまり、クロマチン動態が重要な役割を担っている。しかしながら、クロマチン動態や、その制御因子群がクロマチン上で起こす動的構造変化をナノ空間、かつ、リアルタイムで可視化し解析した例はない。本研究は、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて、クロマチンのナノ動態の実時空間イメージングを試み、クロマチン動態および、その関連タンパク質の分子作動機構を明らかにすることが目的である。 初年度は、クロマチンの構成因子であるヌクレオソームに対して高速AFMを適用し、AFM基板上でもヌクレオソーム動態ができるだけ阻害されない観察条件を検討した。いくつかのヌクレオソームに対し、様々な高速AFM基板を適用した結果、一般的なAFM観察に用いられるマイカ基板表面にPoly-L-Lysineを修飾したPLL修飾マイカ基板が、ヌクレオソーム動態の阻害を最小にすることが分かった。次に、3種類のクロマチンリモデラーに対し、高速AFM観察を行ったところ、どの酵素においても、2つの固いドメインと、その間から延びるひも状ドメイン、さらに、そのひも状ドメインの先端に球状ドメインを持つことが分かった。これまでに予想されている構造と比較すると、2つの固いドメインは、ヒストンに巻き付いたDNAと結合する部位で、ひも状ドメインはヌクレオソーム間のDNA配列に結合する部位と考えられる。次年度は、モノヌクレオソームに結合したリモデラーに高速AFM観察を適用し、ATP添加によるリモデリング過程の可視化を試みる。また、領域内共同研究を開始し、H2AのヒストンバリアントであるH2A.Bを含むヌクレオソームの動態観察を行い、H2Aの自己ヒストン交換反応の分子作動機構を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、クロマチンの構成因子であるヌクレオソームに対して高速AFMを適用し、AFM基板上でもヌクレオソーム動態ができるだけ阻害されない観察条件を検討した。モノヌクレオソーム、テトラヌクレオソーム、ポリヌクレオソームを用い、マイカ基板, アミノシラン修飾基板, 脂質二重膜基板, Poly-L-Lysineを修飾したPLL修飾基板を試したところ、PLL修飾基板がヌクレオソーム動態の阻害を最小にすることが分かった。特に、分子量が1000~5000 DaのPLLが最も適していることが分かり、今後のクロマチン動態の観察への基礎となるデータを得た。次に、3種類のクロマチンリモデラー(hSWI/SNF複合体, SNF2H, CHD7)に対し、高速AFM観察を行ったところ、2つの固いドメインと、その間から延びるひも状ドメイン、さらに、そのひも状ドメインの先端に球状ドメインを持つことが分かり、クロマチンリモデラーに共通する立体構造を明らかにした。しかし、その一方で、hSWI/SNF複合体とCHD7は精製タンパク質の純度が低く、また凝集した様子が多く観察され、明瞭な高速AFM画像を得ることが困難であった。他方、SNF2Hは精製タンパク質の純度が高く、明瞭な高速AFM画像を得ることができた。また、実験試行回数は少ないが、SNF2Hとモノヌクレオソームを結合させ、その複合体の高速AFM観察を試みた。その結果、ヌクレオソーム中のヒストン部分に大きな構造体が観察され、おそらく、ヒストンに巻き付いてDNA部位にSNF2Hの2つのドメインが結合する様式が予想される。以上の研究成果から、初年度は概ね順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、初年度で得た高速AFM基板条件を用い、以下に記述する3つの研究を行う。(1)ATP依存性クロマチンリモデリング複合体(SNF2H)の高速AFM観察を行う。チューブ内で、あらかじめクロマチンリモデリング複合体とヌクレオソームを結合させ、ATP非存在下で高速AFM観察を開始する。クロマチンリモデリング複合体と結合したヌクレオソームを見つけ、コントロールのためしばらく高速AFM観察を続ける。その後、1 mM のATPを添加し、ヌクレオソームのリモデリングを開始させる。ヌクレオソームの大規模なリモデリングをリアルタイム観察すると共に、クロマチンリモデリング複合体のドメインの構造変化も詳細に観察する。(2)2種類のヒストンメチル化酵素(EHMT2, PRC2 complex)の高速AFM観察を行う。AFM基板にはマイカを用い、ヌクレオソームと結合していない場合の酵素の構造とその動態を可視化する。その後、AFM基板に固定する前に、ヌクレオソームとヒストンメチル化酵素をあらかじめ反応させ、高速AFM観察を試みる。その際、ヒストンメチル化酵素の有無によるヌクレオソームの構造安定性や動態を詳細に観察する。(3)領域内共同研究(胡桃坂計画班)として、H2AヒストンバリアントであるH2A.Bを含むヌクレオソームの高速AFM観察を引き続き行い、H2A.B-H2BダイマーがH2A-H2Bダイマーと自発的に交換する分子メカニズムの解明を試みる。おそらく、野生型のヒストンで構成されたヌクレオソームとヒストンバリアントで構成されたヌクレオソームではヌクレオソーム構造の安定性や柔軟性が異なると予想される。さらに、生化学実験より、H2A.Bヒストンバリアントと似た構造を示すH2Aヒストン変異体を含むヌクレオソームの高速AFM観察を用い、自己ヒストン交換反応の統一的な理解を試みる。
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[Journal Article] Macrocyclic peptide-based inhibition and imaging of hepatocyte growth factor.2019
Author(s)
Katsuya Sakai, Toby Passioura, Hiroki Sato, Kenichiro Ito, Hiroki Furuhashi, Masataka Umitsu, Junichi Takagi, Yukinari Kato, Hidefumi Mukai, Shota Warashina, Maki Zouda, Yasuyoshi Watanabe, Seiji Yano, Mikihiro Shibata, Hiroaki Suga*, and Kunio Matsumoto
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Journal Title
Nat. Chem. Biol.
Volume: 15
Pages: 598-606
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Crystal structure of Heliorhodopsin.2019
Author(s)
W. Shihoya, K. Inoue, M. Singh, M. Konno, S. Hososhima, K. Yamashita, K. Ikeda, A. Higuchi, S. Okazaki, T. Izume, M. Hashimoto, R. Mizutori, S. Tomida, Y. Yamauchi, R. Abe-Yoshizumi, K. Katayama, S. P.Tsunoda, M. Shibata, Y. Furutani, A. Pushkarev, O. Beja, T. Uchihashi, H. Kandori and O. Nureki
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Journal Title
Nature
Volume: 574
Pages: 132-136
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Structure and biophysical characterization of the heliorhodopsin.2019
Author(s)
W. Shihoya, K. Inoue, M. Singh, M. Konno, S. Hososhima, K. Yamashita, K. Ikeda, A. Higuchi, S. Okazaki, T. Izume, M. Hashimoto, R. Mizutori, S. Tomida, Y. Yamauchi, R. Abe-Yoshizumi, K. Katayama, S. P.Tsunoda, M. Shibata, Y. Furutani, A. Pushkarev, O. Beja, T. Uchihashi, H. Kandori and O. Nureki
Organizer
57th日本生物物理学会年会
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