2019 Fiscal Year Annual Research Report
Chromatin potential underlying the cellular reprogramming triggered by DNA damage
Publicly Offered Research
Project Area | Chromatin potential for gene regulation |
Project/Area Number |
19H05274
|
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
玉田 洋介 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (50579290)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | DNA損傷 / クロマチン / 幹細胞化 / エピゲノム / 生細胞イメージング / 補償光学 / ホログラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA損傷による幹細胞化に、DNA損傷センサーキナーゼATRとヒメツリガネゴケにおける幹細胞化シグナルの統合因子STEMIN1が必須であること、またDNA損傷誘導後に幹細胞化する細胞にSTEMIN1プロモーターが発現することを明らかにしているが、STEMIN1過剰発現後にヒストン修飾のChIP-seqを行った結果、STEMIN1がH3K27me3の脱メチル化を促進することで幹細胞化を誘導していることを示す結果を得た。STEMIN1過剰発現後、サンプリングの段階では細胞周期は回っていないことから、STEMIN1はDNA複製によるヒストン修飾の希釈ではなく、JmjCによるH3K27me3の脱メチル化を促進していることが示唆された。 DNA損傷による幹細胞化に細胞死は必須ではないことがわかっているが、DNA損傷誘導の数日後に低い確率で細胞死が誘導された。細胞死が誘導されるのはSTEMIN1プロモーターが発現する細胞であり、強いDNA損傷を受けた細胞において幹細胞化と細胞死がせめぎあっていることが示唆された。 また、DNA損傷による幹細胞化の過程における定量的深部細胞核イメージングを実現するため、光の乱れを計測し補正することで回折限界の深部イメージングを行う補償光学の研究を国立天文台などと共同で進めている。光の乱れを計測するためにレーザーを葉緑体に入射して得られる自家蛍光を参照光源として用いているが、レーザーパワーと得られた自家蛍光のビーム径を調整することで、光毒性を抑えつつ感度よく光の乱れを計測できるようになった。また、神戸大学と共同で、光の強度と位相の両方を定量的に計測できるホログラフィーを生細胞イメージングに適用する研究を進めている。レーザーを用いたディジタルホログラフィーによる生細胞の定量位相イメージングに成功し、論文にて発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における2本柱は、「DNA損傷による幹細胞化の基盤となるエピゲノム動態の解明」と「DNA損傷による幹細胞化過程における細胞核動態解明を可能にする新規深部生細胞定量イメージング法の確立」である。前者については、DNA損傷による幹細胞化に必須のSTEMIN1が、標的遺伝子群におけるH3K27me3のグローバルな脱メチル化を介して幹細胞化を促進することを解明した。また、DNA損傷によって細胞死を迎える細胞には細胞死の直前までSTEMIN1が発現していることから、DNA損傷による細胞死の誘導とSTEMIN1によるクロマチンポテンシャルの解放を介した幹細胞化の誘導との間でせめぎあいが存在することが示唆された。その他、STEMIN1の上流でDNA損傷による幹細胞化に機能する因子を同定するため、DNA損傷誘導後に発現が変動する因子の機能解析も進行中である。後者については、天文技術補償光学による光の乱れの計測と補正の高効率化に加えて、シングルショットで3次元の位相情報を定量的に計測可能なディジタルホログラフィーを顕微鏡に適用することに成功するなど、当初の計画以上の進展が見られた。その一方、DNA損傷誘導後のATAC-seqなどのエピゲノム解析については来年度に残された課題となった。以上を総合して、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
DNA損傷による幹細胞化の基盤となるエピゲノム動態の解明:DNA損傷によって多数の抑制遺伝子座がユークロマチン化されて脱抑制され、それによって幹細胞化が誘導されるという仮説を検証するため、ヒメツリガネゴケ茎葉体にDNA損傷試薬を処理した後、開かれたクロマチン領域を同定するATAC-seqなどのエピゲノム解析を行う。試料として、野生株とATR遺伝子の欠失株を用いる。 DNA損傷による幹細胞化に機能する新規因子の同定:DNA損傷誘導前後のトランスクリプトーム比較を行い、DNA損傷誘導の後、幹細胞化の前に発現が誘導されるクロマチン関連遺伝子、転写因子、DNA損傷応答因子などを多数単離している。これらの遺伝子のノックアウト株を作出して、その茎葉体にDNA損傷試薬を処理し、幹細胞化が誘導されるか観察する実験と、蛍光タンパク質遺伝子のノックイン株を作出して、DNA損傷誘導後の発現を観察する実験を継続する。 深部細胞核定量観察を可能にする新規イメージング法の確立:補償光学顕微鏡、ホログラフィー顕微鏡に関する共同研究を継続し、DNA損傷による幹細胞化過程における細胞核の定量観察を可能にする新規イメージング法の確立を目指す。観察対象として、これまでに作出したLHP1-YFP株を用いる。LHP1は陸上植物においてH3K27me3に結合し、条件的ヘテロクロマチン形成に機能することが示唆されている。これまでに、細胞核におけるLHP1-YFPタンパク質の局在を分化細胞と幹細胞とで比較し、LHP1-YFPスペックルの数とサイズが大きく異なることを見出している。この株を補償光学顕微鏡やホログラフィー顕微鏡を用いて観察し、DNA損傷による幹細胞化過程における深部細胞核4Dイメージングが可能な条件を探索する。
|
Remarks |
服部雅之、玉田洋介「第1回補償光学顕微鏡ハンズオンセミナー」オーガナイザー、宇都宮大学、2019.12.9 玉田洋介「日本光学会年次学術講演会OPJ2019シンポジウム『新しい生命現象解明に迫るバイオイメージングの最先端』」オーガナイザー、大阪大学、2019.12.3
|
Research Products
(15 results)
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Physcomitrella STEMIN transcription factor induces stem cell formation with epigenetic reprogramming2019
Author(s)
Ishikawa M, Morishita M, Higuchi Y, Ichikawa S, Ishikawa T, Nishiyama T, Kabeya Y, Hiwatashi Y, Kurata T, Kubo M, Shigenobu S, Tamada Y, Sato Y, Hasebe M
-
Journal Title
Nature Plants
Volume: 5
Pages: 681-690
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-