2019 Fiscal Year Annual Research Report
ユビキチンテクノロジーの創出によるウイルス出芽の解剖
Publicly Offered Research
Project Area | New frontier for ubiquitin biology driven by chemo-technologies |
Project/Area Number |
19H05286
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
有井 潤 神戸大学, 医学研究科, 特命准教授 (30704928)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ウイルス / HSV / 核膜 / 膜切断 / ユビキチン |
Outline of Annual Research Achievements |
膜タンパク質へのUb化は、エンドゾームなどへの輸送のほか、ESCRT-IIIを活性化することで膜切断を引き起こし、小胞出芽を誘導すると考えられている。多くのエンベロープウイルスが細胞から脱出するときにも、ESCRTタンパク質などUb化システムが必要とされるが、実際に積荷タンパク質自身に対するUb化が直接膜切断を誘導している証拠はほとんどない。またウイルスは、さまざまなUbリガーゼの標的を変化させることが知られており、ウイルス感染細胞におけるUb化状態を包括的に理解しなければ、ウイルス出芽におけるUb化の意義を知ることができないと考えられる。本研究ではユビキチンテクノロジーを創出し、それを駆使することで、小胞出芽の分子機構の理解と制御を行い、ケモテクノロジーと細胞生物学との融合を試みる。 ヘルペスウイルスは核内でゲノム複製を行うため、核内においてゲノムを内包したカプシドを形成する。このカプシドは、核内膜から出芽し、核膜間にエンベロープに包まれた小胞を形成する。今年度は、核内膜の出芽に必須のウイルス因子NECに注目した。NECに変異を導入することで、NECが核膜間に小胞を形成する分子機構の解明を目指した。NECに網羅的に変異を導入し、解析を行ったが、膜切断やESCRT-IIIとの関係に変化を及ぼすものは得られなかった。しかしこれらの研究の過程に興味深い変異体2種類について、詳細に解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ヘルペスウイルス感染細胞において認められる、カプシドの核内膜からの出芽に注目した。核内膜の出芽に必須のウイルス因子NECに変異を導入することで、NECが核膜間に小胞を形成する分子機構の解明を目指した。NECはこれまで6量体を基本単位とする格子構造を形成することで膜変性を誘導すると考えられてきたが、感染細胞における意義は解析されていなかった。今回、6量体間の連結部位に変異を導入することで、NEC同士の連結が、核内膜からの出芽やウイルス増殖に貢献することを明らかにした。さらに、NECがカーゴであるカプシドを認識するために必要なアミノ酸を同定し、その変異体を解析した。これらの結果によりが核膜間に小胞を形成するために必要な、膜変性およびカーゴ取り込みは、ウイルス因子NECによって引き起こされていることが再確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヘルペスウイルスの核内からの出芽における膜切断を担うNEC上のアミノ酸の同定を目指す。さらに、ウイルス出芽に重要な貢献をするアダプタータンパク質ALIXとその相互作用因子との結合を特異的に阻害するペプチドを用いることで、ウイルス出芽の分子機構を詳細に明らかにする。
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