2019 Fiscal Year Annual Research Report
Efficient Chemical Synthesis of Polyubiquitin and Ubiquitinated Proteins
Publicly Offered Research
Project Area | New frontier for ubiquitin biology driven by chemo-technologies |
Project/Area Number |
19H05287
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
林 剛介 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40648268)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | タンパク質標識化 / ユビキチンプロテオミクス / in vitroセレクション / 人工抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、(A)Sortaseを用いたユビキチン化サイト含有ペプチドラベル化技術の開発、および(B)ユビキチンに結合する人工抗体の開発、の2テーマについて研究を推進した。 テーマ(A)について ユビキチン化タンパク質をプロテオミクス解析の技術を用いて網羅的に解析するためには、ユビキチン化されたタンパク質を濃縮することが重要である。細胞から抽出したタンパク質画分をトリプシン等のプロテアーゼで処理した場合、ユビキチン化サイトであるリシン残基にはGly-Gly配列が残存するが、従来法ではこのGly-Gly含有ペプチドを抗体を用いて濃縮していた。しかし、この方法ではペプチドに対する親和性が弱くまた、抗体を使用するためロット差やコストの問題があるため信頼度の高いデータを得るのは困難であった。そこで我々は、末端Gly選択的に修飾を施すことのできるSortaseに注目した。今年度の研究の結果、Sortaseを用いることでGly-Gly含有ペプチドに高効率でビオチン化できること、またSortaseの逆反応を用いてペプチドを結合させたビーズ上から回収できることを示した。 テーマ(B)について ユビキチンに結合する抗体、あるいは抗体様タンパク質は、ポリユビキチン化の細胞内制御やユビキチン分子の検出・濃縮に有用である。我々は、mRNAディスプレイ法の変法であるTRAPディスプレイ法を用いてユビキチンモノマーに結合する人工抗体の取得に成功した。人工抗体骨格としては、フィブロネクチン骨格を有する「モノボディ」を使用した。得られたモノボディは、ユビキチンにnM前後の結合定数で結合することが示された。また、K48およびK63鎖のポリユビキチン化反応を阻害することも示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
テーマ(A)については、モデルペプチドおよびビオチン化の合成、活性が向上した変異体Sortaseの作製、Sortase反応条件の最適化、Sortaseを用いた切断反応(逆反応)の提案と実証、細胞抽出液を用いたSortase反応の確認、など目的とするプロテオミクス解析の一歩手前まで1年足らずで到達したため。 テーマ(B)については、ユビキチンに結合する人工抗体の取得だけでなく、人工抗体の発現・精製、親和性の評価、ポリユビキチン化実験の実施、などの成果を3ヶ月程度で得られたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発したSortaseを用いたGly-Gly含有ペプチドラベル化法を、佐伯領域代表および大竹先生のグループと共同して実際のプロテオミクス解析へと発展させることで、従来法(抗体を用いた濃縮法)と比較してユビキチン化サイトの同定率がどのように変化するかについて解析する。また、SerやThr残基へのユビキチン化についても同様の方法でラベル化可能かどうか、合成ペプチドを用いて評価することも行う予定である。また、昨年度取得したユビキチンモノマーに結合する人工抗体を用いてポリユビキチン化阻害実験や人工抗体の結合特性(結合選択性)の評価、細胞内発現実験を佐伯領域代表のグループと共同して行う予定である。 2020年度から新たに、1)プロテアソーム関連因子RPN10に結合する人工抗体の開発と応用、2)ユビキチン化リボソームに結合する人工抗体の取得と応用、3)ユビキチン化タンパク質の化学合成と構造解析への応用研究、という3つのテーマをそれぞれ、佐伯領域代表グループ、稲田先生グループ、有田先生・西山先生グループ、との共同研究としてスタートする。1)に関しては、我々の研究グループの独自技術であるTRAP提示法を用いてRPN10の3つの異なるドメイン(UIM1、UIM2、RAZUL)に対して選択的に阻害することが可能な人工抗体の取得を目指して研究を実施する。2)に関しては、ペプチド合成およびペプチドライゲーション技術を駆使し、ユビキチン化されたリボソームタンパク質の部分ペプチドをまず化学的に合成した後、TRAP提示法を用いて人工抗体の取得を試みる。3)に関しては、エピジェネティクス分野で重要な「維持メチル化」機構に深く関わるジユビキチン化されたPAF15タンパク質の化学合成を行い、その後構造解析や生化学解析に応用することで新たな生物学的発見につながるような研究を実施する。
|
Research Products
(11 results)