2019 Fiscal Year Annual Research Report
ケモテクノロジーを活用したプレエンプティヴ経路特異的Ubデコーダーの作動機構解明
Publicly Offered Research
Project Area | New frontier for ubiquitin biology driven by chemo-technologies |
Project/Area Number |
19H05293
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
川原 裕之 首都大学東京, 理学研究科, 教授 (70291151)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | Chemotechnology / Ubiquitin / UBA domain / Proteasome / Protein degradation / Preemptive / BAG6 / UBQLN |
Outline of Annual Research Achievements |
BAG6は、リボソームから小胞体へのポリペプチド配送を監視するプレエンプティヴ品質管理を差配している。最近、我々は、BAG6には多くのユビキチンデコーダー(ユビキチン結合タンパク質)、並びにユビキチンリガーゼ群が会合していることを見出した。さらに、BAG6依存的タンパク質品質管理経路は、凝集性プリオンあるいは変異インスリン代謝の中核として機能することが、我々の最近の研究から判明しつつある(未発表)。本研究期間中、BAG6が中核となるプレエンプティヴ品質管理を標的に、神経変性疾患および糖尿病(1型、および2型)の克服に向けたユビキチン創薬への応用を目指して、その基礎となる多くの研究成果を公表することができた。その一部を下に紹介する。
昨年度、我々は、BAG6が低分子量GTPase群のユビキチン化と選択的分解に関わること(Takahashi et al., EMBO Rep., 2019)、障害ミトコンドリアの細胞内輸送に関与すること(Hayashishita et al., FEBS Open Bio., 2019)、心筋ミトコンドリアの恒常性維持に関わるG0S2の分解に関わること(Kamikubo et al., J. Biol. Chem., 2019)、グルコース輸送体GLUT4のインスリン依存性細胞内輸送に関与すること(Minami et al., Biol. Open., 2020)などを論文として公表した。また、細胞内に蓄積した構造不良タンパク質を特異的に認識する新規プローブTanGIBLEの開発に成功すると同時に、この成果が、2020年2月3日付の日経産業新聞 朝刊に掲載(「不良たんぱく質、細胞から回収-首都大、癌など発病解明へ」)され、注目を集めた。このように、我々の研究は当初の予想を超えた領域にまで進みつつあり、今後の飛躍を目指している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞質に生じる病原性凝集体の一部は、小胞体への共翻訳的アッセンブリに失敗した不良タンパク質に由来する。我々はこれまでの実験で、遅発性1型糖尿病発症の原因となりうる疾患点変異を導入したインスリンが、BAG6を介したユビキチン化標的となることを見いだした(未発表)。さらに、BAG6と共同して働くことを我々が見出したユビキチンレセプターも疾患発症型インスリンの分解に必須の役割を果たすことを証明している(未発表)。現在、疾患発症型インスリンのポリユビキチン化を司るE3ユビキチンリガーゼの絞り込みを進めており、不良インスリンの認識、ポリユビキチン化、プロテアソームへのターゲティングの各ステップの全貌を明らかにしつつある(未発表)。さらにインスリンに止まらず、BAG6複合体が、プリオン前駆体のユビキチン化に必須であることを見出してきた。このように、クロイツフェルト・ヤコブ病の原因となるプリオン疑集体、あるいは糖尿病発症の原因となりうるインシュリン疑集体などがプレエンプティヴ品質管理の重要な標的であることを見いだしつつあり、プレエンプティヴ品質管理の特異性決定に重大な役割を果たすユビキチン化システムの意義と機能分担を明らかにしつつある。 本研究の過程で、我々はBAG6複合体の基質認識ドメイン(を含むポりペプチド断片)が、プレエンプティヴ基質に特異的なプローブとなりうること、さらには拮抗阻害剤として機能しうることも見いだした(未発表)。この知見を応用して、細胞内不良タンパク質を検出・定量できる高感度プローブを開発すると同時に、従来のプロテアソーム阻害剤を超える選択性を有する新しいペプチド性阻害剤の開発にも挑んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度では、本申請で確立を目指すケモテクノロジーを、申請者の疾患モデルと組み合わせ、プレエンプティヴ品質管理各ステップの破綻がもたらす疾病発症の全く新しい原理解明に貢献する。不良ポリペプチドの生成を誘導する非売化合物と、我々が既に得ているBAG6複合体の立体構造情報と構造変異体とを有効に組み合わせ、プレエンプティブ経路の中核複合体形成をケミカルに破綻させる。さらにその影響を、プレエンプティヴ経路の代表的な基質:プリオンならびにインスリンの生合成プロセスを評価系として徹底検討する。ケモテクノロジーを活用してBAG6複合体研究が発展すれば、プレエンプティヴ品質管理の破綻がもたらす疾病発症への全く新しい理解につながる。特に、プリオンあるいはインシュリンなどのプレエンプティヴ品質管理異常に起因する神経変性疾患および遅発性1型糖尿病治療への全く新しいアカデミア創薬への途が切り拓かれることが充分に期待できる。現在、BAG6会合E3として同定したRING-fingerタンパク質などを標的に、これらの活性、ならびにBAG6との相互作用を阻害する特異的薬剤の同定進めつつある。このような薬剤を同定できたならば、これらの薬剤が、プレエンプティヴ品質管理の支配下にあるプリオン、あるいは遅発性1型糖尿病発症の原因となる疾患変異型インシュリンの凝集プロセスに与える影響を解明する。 さらに、BAG6複合体の基質認識ドメイン(を含むポりペプチド断片)が、プレエンプティヴ基質をアフィニティー精製するためのベイト(捕獲担体)としても有効であることから、ケモユビキチン領域で進展著しい革新的MS解析と組み合わせて、BAG6複合体の新規標的、ならびに共同して働くユビキチンデコーダーを探索していくことを目指している。
|
Research Products
(16 results)
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Cytoplasmic control of Rab-family small GTPases through BAG6.2019
Author(s)
Takahashi, T., Minami, S., Tajima, K., Tsuchiya, Y., Sakai, N., Suga, K., Hisanaga, S., Obayashi, N., Fukuda, M., and Kawahara, H.
-
Journal Title
EMBO Rep.
Volume: 20
Pages: e46794
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] A molecular triage process mediated by RING finger protein 126 and BCL2-associated athanogene 6 regulates degradation of G0/G1 switch gene 2.2019
Author(s)
Kamikubo, K., Kato, H., Kioka, H., Yamazaki, S., Tsukamoto, O., Nishida, Y., Asano, Y., Imamura, H., Kawahara, H., Shintani, Y., and Takashima, S.
-
Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 294
Pages: 14562-14573
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 生化学2020
Author(s)
川原 裕之、南 雪也、宮内 真帆、高橋 俊樹
Total Pages
6
Publisher
日本生化学会
-