2019 Fiscal Year Annual Research Report
ユビキチン鎖種特異的な高感度アプタマーアレイの開発
Publicly Offered Research
Project Area | New frontier for ubiquitin biology driven by chemo-technologies |
Project/Area Number |
19H05298
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
岡田 麻衣子 東京工科大学, 応用生物学部, 助教 (00572330)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ユビキチン / アプタマー |
Outline of Annual Research Achievements |
ユビキチンは標的タンパク質の翻訳後修飾基として生体の恒常性維持に寄与する低分子量のタンパク質である。一方、ユビキチン修飾はがんや神経変性疾患の病態に密接に関与する。このため、ユビキチン修飾を高感度かつ簡便に認識可能な分子認識素子の開発は、各種疾患の治療や診断において有用であることが期待される。しかしながら、ユビキチン修飾の形態は多様であるため、これらの修飾をすべて識別可能な抗体の開発には成功していない。そこで本研究では、ユビキチン修飾を検出する新たな分子認識素子としてユビキチンアプタマーの獲得を目的とした。 本年度は、ユビキチンアプタマーの獲得におけるSystematic Evolution of Ligands by Exponential enrichment(SELEX)法の最適化および改変をおこなった。特に標的の化学的特性の維持と担体への1本鎖DNA(ssDNA)の非特異的吸着の抑制に考慮した。これにより固定化方法および担体の組み合わせを最適化し、標的である単量体ユビキチンおよびユビキチン鎖に応じたSELEX法の開発を行った。以上、各標的アプタマー候補群については現在評価中ではあるものの、標的特異的なアプタマーの獲得における基盤構築がなされた。 また、既存の抗体およびアプタマーを基盤に、ユビキチンの新規検出系の開発に着手した。特に、リガンドへの標識が不要であるバイオレイヤー干渉法は標的の検出が簡便かつ迅速であり、DNA分解酵素等を含有する生体サンプル中の標的についてもアプタマーを用いた検出が可能であることが示唆された。次年度では本研究による各種ユビキチンアプタマーを用いた生体サンプル中のユビキチン修飾の検出へと応用する予定である。さらに、この生体サンプルの評価に向けて各種疾患におけるユビキチン修飾の基礎的知見を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SELEX法ではssDNAライブラリーを標的固定化担体に供し、標的に結合したssDNAを単離・増幅を繰り返すことで、標的特異的なssDNAを濃縮・選別することが可能である。しかしながら、担体にssDNAが非特異的に結合した場合、PCR増幅効率によっては特異的なssDNAではなく非特異的なssDNAが選択的に濃縮されることがアプタマー獲得の上での障壁であった。また、ssDNAの非特異的な吸着は担体の特性によるところが大きく、この特性は標的の固定化に利用する担体表面の官能基の化学的性質の影響をうける。さらに、標的の固定化方法は担体表面の官能基によってもある程度規定されるが、それにより標的本来の化学的性質を損なうことが懸念される。 以上の点を踏まえると、本研究の遂行では標的として単量体ユビキチンおよび各ユビキチン鎖に応じた固定化方法が、特異性の高いアプタマー獲得の鍵となる。そこで、様々な官能基を有する担体を用いて標的を固定化してアプタマーの獲得を行った。その結果、単量体ユビキチンについては、カルボキシ基を有する担体を用いた標的ユビキチンの固定化が有効であることが示された。一方、ユビキチン鎖については、配向性を考慮したユビキチン鎖の固定化が必要であり、ビオチン標識したユビキチン鎖によるストレプトアビジンビーズへの固定化の有用性が示唆された。以上より、本年度はユビキチンアプタマー獲得における課題を克服しており、当該目標の達成にむけて順調に研究を進展することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ユビキチン鎖種特異的なDNAアプタマーの獲得:単量体ユビキチンアプタマーを評価するとともに、本年度検討した各ユビキチン鎖固定化担体を用いたSELEX法を改変する。SELEX法の工程では単量体ユビキチンを認識するssDNAが優先的に濃縮されることが問題となるため、単量体ユビキチンアプタマーによる競合反応を追加することで、各ユビキチン鎖を特異的に認識するssDNA(ユビキチン鎖種特異的アプタマー候補群)の獲得を試みる。 2. ユビキチン鎖種特異的アプタマーの評価:ユビキチン鎖種特異的アプタマー候補群を蛍光偏光法およびバイオレイヤー干渉法(Biolayer interferometory:BLI)に供して、標的ユビキチン鎖との相互作用および特異性をin vitroにて評価する。つづいて、各種疾患モデル細胞等を用いて、ユビキチン特異的DNAアプタマーによる内在性ユビキチン鎖の検出を、BLI法および蛍光染色法にて評価する。 3. K48Ub-K63Ub分岐鎖の検出系の構築:分岐鎖ユビキチンのモデルとして、K48結合型ユビキチン(K48-linked ubiquitin:K48Ub)とK63結合型ユビキチン(K63-linked Ubiquitin:K63Ub)からなるK48Ub-K63Ub分岐鎖ユビキチンの検出系を構築する。また、上記1~3より取得したK48UbアプタマーおよびK63Ubアプタマーを連結したキメラアプタマーによる分岐鎖ユビキチンの検出を試みる。 4.ユビキチン鎖種特異的なDNAアプタマーアレイの作製:ユビキチン鎖種特異的DNAアプタマーを固定化した基板を作製し、蛍光標識ユビキチンアプタマーを用いたサンドイッチアッセイ系を構築する。ユビキチン鎖の検出感度に応じて、検出感度向上に向けた基板のコーティングおよびアプタマーの基板への固定化方法を検討する。
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Remarks |
第1回ファーマラボEXPO-[医薬品]研究開発展-(https://d.interphex.jp/ja/Expo/5731690/----)において「がん治療における新規分子標的としてのプロテアソーム制御因子群の可能性」という演題にて発表(ポスターおよび口頭)
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Research Products
(8 results)