2019 Fiscal Year Annual Research Report
脳の時間の単位の進化:ヒト・サル・イルカの無侵襲脳波記録による検討
Publicly Offered Research
Project Area | Chronogenesis: how the mind generates time |
Project/Area Number |
19H05309
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊藤 浩介 新潟大学, 脳研究所, 特任准教授 (30345516)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 聴覚 / 時間窓 / 脳 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳が外界を知覚する、まさにその機能が、脳の時間の最小単位を規定する。例えば聴覚では、数100ミリ秒の時間窓(時間幅)が単位となり、この時間窓内の刺激は、ひとつの聴覚イベントに統合されて聞こえる。この時間窓の長さには種差があっても、不思議ではない。そして、もし感覚野の知覚処理に時間窓の種差があるならば、感覚野から情報を受ける連合野や他の脳部位にも、それに応じた時間窓の種差があるはずである。つまり、外界情報の知覚を規定する境界条件としての時間窓は、いわば、脳の時間の単位や秒針のようなものと言える。そのため、知覚の時間窓が進化でどのように変化したか(あるいはしなかったか)は、脳の時間の種差を考える上で、極めて根本的な問題である。 しかし、知覚の時間窓に種差があるかもしれないという可能性そのものが、これまでほとんど検討されたことがない。そこで本研究は、ヒト、マカクザル、マーモセット、そしてイルカを対象とした比較研究により、時間処理がとくに重要な聴覚に注目し、脳の知覚の時間窓の進化を明らかにすることを目的とした。脳活動の指標には、頭皮上から無侵襲で記録できる、聴覚誘発電位(AEP)を利用する。 本年度の研究では、持続時間を様々に変えた時のAEP振幅の変化を調べることで、ヒトとアカゲザルで聴覚処理の時間特性に種差があることを明らかにした(Itoh et al., 2019)。また、マーモセットの無侵襲AEP波形の形状や潜時を世界で初めて記載し(Itoh et al., submitted)、ヒト・アカゲザル・マーモセットの3種での時間窓の種差の解析を進めている。さらに、イルカで脳波記録を行うためのプロトコルやデバイス(電極シート)の作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サルを対象とした実験は順調に進展している。イルカを対象とした実験については、対象個体の出産があったことで現地での作業が行えなかったものの、電極の改良など、できる範囲の準備を進めておいた。出産後の母子は健康であり、このまま推移すれば、次年度には研究が再開できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
サル類を対象とした実験は、順調に進展しているので、このまま継続する。COVID-19の影響により出張が制限され、実験が出来なくなったとしても、これまでに取り溜めたデータの解析により、新しい成果が得られる見込みである。イルカを対象とした実験は、被検体(イルカ)およびCOVID-19が水族館に与える影響など、不確定な要素が多いが、チャンスがあれば逃さないよう準備を整えておく。
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Research Products
(5 results)