2019 Fiscal Year Annual Research Report
Neural mechanism of action timing decision based on distribution of reward delays
Publicly Offered Research
Project Area | Chronogenesis: how the mind generates time |
Project/Area Number |
19H05310
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
村上 誠祥 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00831025)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 意思決定 / 行動タイミング / 高次運動皮質 / 神経回路 / 電気生理学 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
いつも乗る通勤電車が遅れていたとき、どのくらい電車を待つべきで、いつ諦めて別の手段に切り替えるべきだろうか。このような状況では、過去にどのくらい待たされたかという経験に基いて、適切に行動のタイミングを決定する必要がある。本研究では、研究代表者が独自に開発した遅延報酬課題を用い、過去に遅延報酬をどれくらい待たされたかの経験に基づいた適応的行動タイミング決定の神経基盤を明らかにする。前頭皮質の神経集団により過去に経験した遅延時間の情報とそれに基づく行動タイミングの情報がどのように表現され、またそこからどのような出力が下流に送られることで適切なタイミングでの行動発現につながるのかに迫る。 令和元年度は、適応的行動タイミングの神経メカニズムを光遺伝学、薬理遺伝学、電気生理学的手法など多角的なアプローチを用いて解明できるよう、マウスを用いた遅延報酬行動課題を確立した。特に複数の多点電極を用いたり2光子励起イメージングを用いたりして大規模神経活動記録が行えるよう、頭部固定下の行動課題を採用した。この行動課題では、マウスがすぐに得られる少量の報酬を取りにいかず、トレッドミル上でじっとしているとランダムな遅延の後に大量の報酬がもらえる。この課題でマウスが大量の報酬を数秒から数十秒間待ち続けられることを明らかにした。また、マウスが、過去の試行でどれくらいの時間、遅延報酬を待たされたかにより、適応的に待ち時間を変化させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、適応的行動タイミングの神経メカニズムを光遺伝学、薬理遺伝学、電気生理学的手法など多角的なアプローチを用いて解明できるよう、マウスを用いた遅延報酬行動課題を確立した。特に複数の多点電極を用いたり2光子励起イメージングを用いたりして大規模神経活動記録が行えるよう、頭部固定下の行動課題を採用した。この行動課題では、試行開始後にマウスがトレッドミル上で動かずにじっとしているとランダムな遅延の後に大量の報酬がもらえる。しかし途中で待つのを諦めトレッドミル上を歩き出すと少量の報酬を得られる。この課題でマウスが大量の遅延報酬まで数秒から数十秒間待ち続けられることが明らかになった。また、過去の試行の待ち時間や報酬の量により、マウスが適応的に待ち時間を変化させるかを調べるために、試行を報酬の量(大・小の2グループ)と待ち時間(短い、中位、長いの3グループ)により6グループに分類し、それぞれのグループでその試行の前後の待ち時間の変化を調べた。この解析により、遅延報酬まで待ちきれて大きい報酬をもらった後には、より遅延報酬を待てるようになること、また長く待たされた試行の後には、遅延報酬を待ちにくくなることが示唆された。つまり、この遅延報酬課題において、マウスが過去の待ち時間に従い、適応的に待ち時間を変化させることが示唆された。 このようにプロジェクトはおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和二年度は、過去の経験に従い適応的に行動タイミングを決定するための神経メカニズムを調べるために、上記の行動課題遂行中に神経活動記録や神経活動操作を行う。前頭葉の高次運動皮質には行動タイミングの決定に関連する神経活動を示す細胞が存在することが知られているため、高次運動皮質の神経細胞とそれらの細胞と神経連絡を持つ細胞に着目して研究を進める。高次運動皮質の行動タイミングに関連する神経活動が過去の経験に従い変化するかどうか、また、高次運動皮質のどのような神経活動が最終的に高次運動皮質から出力されて、実際に行動を引き起こすのに使われるのかに迫る。
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