2019 Fiscal Year Annual Research Report
空間認知からの時間生成
Publicly Offered Research
Project Area | Chronogenesis: how the mind generates time |
Project/Area Number |
19H05317
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中田 節子 (有田節子) 立命館大学, 言語教育情報研究科, 教授 (70263994)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 時間認知メカニズム / ジェスチャー / 時空間マッピング / 指示詞 / 時間語彙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は厳密に統制された実験によって、九州方言、韓国語、琉球諸語を含む諸言語での時間・空間の認知プロセスを明らかにすることを目的とし、従来の言語学的分析に加えて、発話に随伴するジェスチャーとさまざまな装置を用いた実験的手法によって、時空間の認知プロセスの解明を試み、人間言語に普遍的な本研究は時間認知のメカニズムを解明することを目指している。今期は主にA. 言語学的分析のための準備と、B. パイロット実験の準備および試験的実施を行った。Aについては、ジェスチャーによる空間・時間の相関を見る準備として、指示詞の空間的使用と時間的使用、時間の前後関係の空間的使用と時間的使用の相関について、文献的な調査を行い、その内容を申請者、研究協力者の間で情報共有した。また、研究代表者の有田は、時間表現と論理表現の共通性と相違性について、時間節と論理節における時制解釈の違いに着目して分析をすすめその成果の一部を公刊した。研究協力者の田窪は時空間マッピングと言語表現の関係についての研究の成果を公刊した。Bについては、海外研究協力者でこの分野で世界的に著名な研究者であるRafael Nunez氏を招き、言語使用と随伴ジェスチャーによる時空間の相関の言語的実験の方法についての教示を受け、宮古語の話者を対象にパイロット的実験として、空間と時間の両方を表す表現を使用する際のジェスチャーを記録し、一部分析し、実験方法の見直しなどを検討した。それに並行して、本土方言話者にも同様の実験を行った。宮古島での本格調査がコロナの影響で実施できず、また、他の地方および海外での調査も中止せざるをえなくなった。その間、分析に必要なジェスチャーのコーディングの基準の策定や既存の動画データを用いた分析を進めた。また、統語構造とポーズの関係についてのデータの収集も始めた。これらの成果の一部を領域会議で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結果的に再繰越することになったものの、1年目で、当初計画していた言語学的分析のための準備と、パイロット実験のための準備と試験的実施については、8割程度できていた。コロナの影響で、国内外での移動ができなくなり、宮古島での調査の予定が立たなかったのは問題だが、その間、移動を伴わずにできることを前倒しして行ったことで、結果的には順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
策定したジェスチャーコーディング基準にもとづき、本土方言の文字付き動画にコーディングし、それをもとに、時間・空間の認知プロセスのメカニズムを探る。コーディング自体は個人作業だが、その分析については、定期的にデータセッションを行いながら進める。韓国語の動画データに文字起こしおよび翻訳をつけ、これについても上記基準に基づきジェスチャーのコーディングを行い、同じくデータセッションを行いながら分析を進め、日本語と韓国語の比較検討を行う。その一方で、ポーズと統語構造の関係についての分析も進める。以上、コロナの状況に左右されない方法で、研究を進める。その研究成果を学会等のワークショップなどで広く公開する。コロナ感染状況が改善したあかつきには、ふたたびRafael Nunez氏を日本に招き、公開シンポジウムを開催する予定がある。
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Research Products
(22 results)
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[Book] 筑紫語学論叢Ⅲ:日本語の構造と変化2021
Author(s)
青木博史 , 有田節子 , 有元光彦 , 江口泰生 , 岡島昭浩 , 荻野千砂子 , 勝又隆 , 川瀬卓 , 衣畑智秀 , 清田朗裕 , 久保薗愛 , 東寺祐亮 , 新野直哉 , 西村浩子 , 平子達也 , 堀畑正臣 , 前田桂子 , 松浦年男 , 村 , 山実和子 , 森脇茂秀 , 山本佐和子
Total Pages
513
Publisher
風間書房
ISBN
978-4-7599-2373-5
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[Book] 日本語のテンス・アスペクト研究を問い直す 第2巻 「した」「している」の世界2021
Author(s)
有田節子 , 庵功雄 , 岩本遠億 , 奥川育子 , 高田祥司 , 定延利之 , 田川拓海 , 高山善行 , 福嶋健伸 , 松田真希子 , 和田尚明
Total Pages
313
Publisher
ひつじ書房
ISBN
978-4-89476-782-9
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[Book] 時間と言語2021
Author(s)
青山拓央 , 有田節子 , 大角翆 , 越智綾子 , 鍛冶広真 , 河村満 , 木村英樹 , 小山虎 , 佐々木文彦 , 嶋田珠巳 , 田窪行則 , 中村ちどり , 西山佑司 , 花塚優貴 , 林徹 , 二村明徳 , 緑川晶 , 吉本啓
Total Pages
284
Publisher
三省堂
ISBN
978-4-385-36510-7
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[Book] データに基づく日本語のモダリティ研究2020
Author(s)
田窪行則 , 野田尚史 , 有田節子 , 小磯花絵 , 中俣尚己 , 木部暢子 , 小木曽智信 , 迫田久美子 , 佐々木藍子 , 細井陽子 , 須賀和香子 , 松吉俊 , 浅原正幸 , 窪園晴夫 , 益岡隆志
Total Pages
221
Publisher
くろしお出版
ISBN
978-4-87424-828-7
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