2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Autonomously Actuating and Living Bio-Robots
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Soft Robot: interdisciplinary integration of mechatronics, material science, and bio-computing |
Project/Area Number |
19H05336
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
古澤 和也 福井工業大学, 環境情報学部, 准教授 (00510017)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ソフトロボット / バイオロボット / 自律運動 / 大脳オルガノイド / 再生筋組織 / 運動の制御機構 / 組織工学 / 組織-組織間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の体をつくる細胞とゲルを組み合わせて、筋肉の様に伸び縮みする部品と、その部品の動きを制御する脳の働きをする部品をつくる。さらにこの二つの部品を組み合わせることで「自律した運動を行う生きたバイオロボット」を構築する。このようにして組み立てたバイオロボットが、どのようにして運動という動物の基本的な機能を獲得するのかを説明するメカニズムを解明する。以上の研究を通して、我々動物がどのように運動という基本機能を獲得したのかを知ることが本研究の最終目標である。 本年度は、多管構造を持つコラーゲンゲル(以下MCCG)を用いて生きたバイオロボットの部品となる再生筋組織を構築した。この再生筋組織の内部には、一定方向に配列した筋線維様細胞塊が形成されており、実際の筋組織の筋線維の配向を良く再現することができている。また、この筋細胞塊はMCCGのコラーゲン基質によって区画分けされており、このことも実際の骨格筋の高次構造(筋周膜と筋線維からなる高次構造)を高度に再現している。この方法とは別に、ファイバー状MCCG中で筋芽細胞と繊維芽細胞を三次元的に培養することにより再生筋組織を構築する方法も確立することができた。 Lancasterらのプロトコルに従ってヒト大脳オルガノイドを構築し、これを上述の方法で構築した再生筋組織と接触させながら共培養することにより、バイオロボットの試作機を構築した。現時点での最大の成果は、大脳オルガノイドと再生筋組織を一つの培養容器内で培養維持する培養条件を決定することができたことのみである。今後は、この二つの組織を組み合わせる方法について条件検討を行うことにより、本研究の目標であるバイオロボットの構築を実現し、そこまでの研究により明らかとなった知見を総括することで本研究の最終目標である動物の運動の獲得機構の解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、生きたバイオロボットのアクチュエーターとなる再生筋組織の構築技術を、当初計画通りの方法で構築することができた。この研究では、足場となるMCCGを弾性率を増強することが、一定方向に配列した筋芽細胞塊の形成に必要であることが示唆された。このことにより、再生筋組織の構築において細胞足場素材の力学的性質の最適化が重要であることを示すことができた。一方で、本研究で構築した再生筋組織は、研究の範囲内で実施した電気刺激実験に対して十分な筋収縮機能を示さなかった。今後は、この結果が電気刺激のかけ方に問題があるのかどうかを確認するために、細胞の分化の状況について調査する。 再生筋組織と大脳オルガノイドを組み合わせることでバイオロボットのプロトタイプを構築することができた。異なる生体組織を一つの培養容器で共培養する場合、どのようにして両方の組織を同時に培養維持するのかが重要な課題となる。本年度の研究では、この重要な課題を解決し、上記バイオロボットのプロトタイプを二つの組織の健常性を維持しながら培養維持する方法を確立することができた。一方で、このバイオロボットは自立した運動を示していない。これが、本研究の当初計画に合った仮説の一つである、「バイオロボットは単に大脳オルガノイドと再生筋組織を組み合わせただけでは自律した運動を発揮せず、自律した運動の獲得には運動に関する学習が必要となる」を実証した結果なのか、それとも単に二つの組織の組み合わせ方に問題があるのかが現時点では不明である。 以上より、本研究課題の進捗は、おおむね順調に進展しているが、これまでの研究により多くの課題が見つかってきており、今後はこれらの課題を一つ一つ解決する必要がある状況である。 また、領域内の連携についても話し合いの段階にある状況なので、今後より具体的な連携研究ついても実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、2019年度に開発した筋線維様細胞塊が一定方向に配列した再生筋組織と、大脳オルガノイドを機能的に接続し、自律的運動の発現機序を解明することを目的とした研究を実施する。既に2019年度において、再生筋組織と大脳オルガノイドを接続しバイオロボットを構築することに挑戦したが、単に接続するだけでは自律的運動は発現しないという予備的な結果が得られている。そこで、本年度は「なぜ自律的運動が発現しないのか?」という課題に焦点を当てた研究を遂行する。具体的には以下の課題に取り組む。 自律的運動が発現するためには再生筋組織と大脳オルガノイドの機能が十分に働いている必要がある。このことを確認するために、再生筋組織と大脳オルガノイドの分化状況を免疫蛍光染色法により解明する。同時に、再生筋組織の筋収縮機能や大脳オルガノイドの機能についても評価する。 再生筋組織と大脳オルガノイドを機能的に接続するためには、運動に関わる信号の伝達経路である運動神経を介した接続が必要不可欠である。さらには筋肉と大脳の間の中継地点である脊髄を配備することも検討しなければならない。2019年度に副次的に得られた研究成果として、神経幹細胞から脊髄様の再生組織を得る方法を確立することができている。本年度は、この脊髄様組織を脊髄に見立てて使用する。 それぞれの組織を接続する順番について検討することも重要な課題である。大脳オルガノイドと脊髄様組織を接続してから再生筋組織につなぐ順番や、脊髄様組織と再生筋組織を接続してから大脳オルガノイドを接続する順番など、考え得る組み合わせについて可能な限り試行する。また、どの発達段階の大脳オルガノイドを接続するのかも、極めて重要な検討事項である。以上より、それぞれの組織の発達状況に合わせて適時、再生組織を接続する方法を確立することで自立的運動が発現するかどうかを解明する。
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Research Products
(5 results)