2019 Fiscal Year Annual Research Report
南琉球八重山諸語における伝播過程の解明と言語系統樹の構築
Publicly Offered Research
Project Area | Deciphering Origin and Establishment of Japonesians mainly based on genome sequence data |
Project/Area Number |
19H05353
|
Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
麻生 玲子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 特任助教 (20810667)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 琉球 / 八重山 / 系統樹 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、沖縄県八重山地域の言葉(八重山語の諸方言)がかつてどのように分かれて今に至るのか、人の動きはどのようなものであったか解明することである。本研究は次の順序で進める。まず、これまでに出版されている八重山語諸方言の語彙集をデータ化する。それでも不足する資料がある場合は、自ら話者を訪ねるフィールド調査を行い、語彙収集しデジタルデータ化する。次に、ある変化が言語群の認定にふさわしい変化か、そうではないかを認定する方法を確立する。最後に、確立した認定方法をもって、データを考察する。
今年度はデータ収集を中心に(1)八重山語に関する書籍(辞書・雑誌)のデジタル化作業と整備(2)現地調査(3)研究発表を行った。それぞれについて詳しく述べる。
(1)の八重山語に関する書籍(辞書・雑誌)のデジタル化作業と整備に関しては、13の書籍に関してデータのデジタル化を行い、系統樹作成のためのデータ整備を行った。(2)に関しては、研究協力者と共に計9回にわたり方言資料収集のための現地調査を行った。調査場所は沖縄県石垣市、沖縄県八重山郡竹富町、沖縄県八重山郡与那国町、沖縄県那覇市である。石垣市の川平方言に関しては、川平村公民館との連携が実現した。連携のもと作成した語彙集はすでに「南琉球八重山川平方言語彙集」として編集が終わっている。『川平村史(仮)』に収録され、2020年6月発行予定である。新城下地方言については、現在語彙集として論文投稿を準備中である。波照間方言については、話者の方が作成した「波照間方言語彙集」をもとにしたデジタルデータを準備中である。(3)に関しては、2回研究発表を行い、進捗状況の報告と本研究課題の手法を提示し有益な意見をもらった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、本公募班は研究協力者と共に(1)八重山語に関する書籍(辞書・雑誌)のデジタル化作業と整備(2)現地調査(3)研究発表を行った。
(1)の八重山語に関する書籍(辞書・雑誌)のデジタル化作業と整備に関しては、13の書籍に関してデータのデジタル化を行った。今後分析を行うにあたり、十分な量のデータが得られた。(2)書籍では得られなかった細かいデータを補完するために現地調査を行った。調査候補地では、地元コミュニティメンバーと良好な人間関係を築くことができ、調査が順調に進んだ。特に石垣市の川平方言に関しては、川平村公民館との連携が実現し、連携のもと作成した語彙集はすでに「南琉球八重山川平方言語彙集」として編集が終わっている。『川平村史(仮)』に収録され、2020年6月発行予定である。新城下地方言については、現在語彙集として論文投稿を準備中である。波照間方言については、話者の方が作成した「波照間方言語彙集」をもとにしたデジタルデータを準備中である。(3)に関しては、2回研究発表を行い、進捗状況の報告と本研究課題の手法を提示し有益な意見をもらった。次年度以降の研究推進に役立てる。
以上のことから順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度デジタルデータ化した資料の整備と最終的な考察を行う。具体的には(1)石垣市川平方言、石垣市宮良方言、石垣市真栄里方言、竹富町新城方言、竹富町波照間方言の資料を増強する。(2)各方言で観察される共通の祖型を持つ単語の紐づけし、データベースを構築する(3)ある変化が言語群の認定にふさわしい変化か、そうではないかを認定する方法を確立する。(4)最後に、(3)で検討した方法をもって、(2)のデータを考察する。来年度はプロジェクト最終年度であるため、本研究で得られた資料・方法によって考えられうる系統樹の提示を行う。本研究は、研究協力者とともにおこなう。具体的なスケジュールは、来年度の前半で資料の増強およびデータベースの設計と実装を行う。データベースの設計は資料の増強を待つ必要はなく、手元にある資料を基に行う。後半はデータベースへのデータ入力を行いながら、系統樹作成のための方法論について検討し、実際に系統樹を作成する。
|