2019 Fiscal Year Annual Research Report
軽くて強くてしなやかな花粉エキシンの立体構造の構築機構とその力学的特性
Publicly Offered Research
Project Area | Elucidation of the strategies of mechanical optimization in plants toward the establishment of the bases for sustainable structure system |
Project/Area Number |
19H05362
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石黒 澄衛 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50260039)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 花粉 / 細胞壁 / 多糖 / アラビノガラクタンタンパク質 / ライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
花粉の外殻であるエキシンは軽量で高い強度を持つドーム状の立体構造を持ち、風や昆虫によって花粉が運ばれる間、内部の配偶子を外界の機械的ストレスから保護している。進化によって導かれたエキシンの力学的最適化のしくみを解明し、強さとしなやかさを合わせ持つエキシンの立体構造の設計図がどのような情報として遺伝子に書かれているのかを明らかにすることが本研究の目的である。 エキシンの立体構造をモデル化するため、シロイヌナズナおよびシンテッポウユリの花粉を透明化したのち蛍光試薬で染色し、エキシンの連続光学切片を撮影して立体構造の再構築を試みた。大型のユリ花粉の場合はこの方法で十分な分解能の像を得ることができたが、小型で微細な網目構造のエキシンを持つシロイヌナズナの場合は特にZ方向の分解能が不十分であった。そこで、葯を樹脂に包埋し、FIB-SEM法を実施したところ、微細な構造まで明瞭に観察できるようになった。 エキシンの形成にはアラビノガラクタンタンパク質(AGP)が必須の役割を担っている。他の多糖と異なり、AGPにはコアタンパク質が含まれることから、葯で特異的に発現するAGPコアタンパク質遺伝子の多重変異体を作出し、その効果を検証した。多重変異体では発達期の小胞子表面に現れるAGPの量が減少し、エキシンが薄くなる変化が見られた。さらにAGPにGFPを連結して発現させたところ、タペート細胞から分泌されたAGPが小胞子表面に蓄積する様子を可視化することができた。タペート細胞で合成されたAGPは特にエキシンの高さ方向の発達に重要な役割を果たすことが確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
花粉エキシンの構造が光学分解能の限界に近いほど微細であることから、立体構造モデル構築のために必要なデータ取得法の検討に時間を要したが、ほぼ解決し、2年目終了までには野生型と変異型の立体構造モデルを比較検討できる見込みとなった。また、エキシンの鋳型成分については、対象となるアラビノガラクタンタンパク質の同定と可視化に成功し、2年目の生化学的解析に向けて順調に研究を進めている。ペクチンやキシランの解析についても予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍のため2019年度末から2020年度初めにかけて研究協力者(大学院生等)が十分活動できない時期があったが、今後は論文作成を含め、できるだけ遅れを取り戻せるように努力したい。研究計画そのものを大きく変更する必要はないので、前向きな成果がなるべく多く得られるように領域メンバーとの連携を深めながら研究を推進する。
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Research Products
(4 results)