2019 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子の改造・創成を実現する新規進化分子工学的スクリーニング技術の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Engine: Design of Autonomous Functions through Energy Conversion |
Project/Area Number |
19H05380
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 博史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10546592)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 進化分子工学 / マイクロデバイス / 分子機械 / ATPase |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では進化分子工学による生体分子の改造・創成を実現する新規スクリーニング技術の開発を目的とする。具体的には1DNA 隔離、タンパク質発現・精製、機能評価、DNA 回収というスクリーニングプロセスをマイクロチャンバーデバイス内で実現する新規進化分子工学的スクリーニング技術を開発する。本研究が実現すれば、1デバイスあたり数万個~数十万個のライブラリの高精度スクリーニングが一日で可能になる。モデル生体分子としてはATPase を対象とし、ATPを分解して化学エネルギーを力学的エネルギーへと変換する分子機械F1-ATPase の改造や新規機能の創成への適応を目指す。本年度は、マイクロチャンバー内における生体分子機械(ATPase)の活性評価技術の確立を行った。計画ではATPaseの精製プロセスを先に開発する予定であったが、活性評価の予備実験においてよい結果が得られたためこちらを優先した。ATPaseのスクリーニングを実現するにはATPase反応のドロップレット内での検出が必要になる。そこでATP分解で生じるADP、Piを酵素カップリング反応により蛍光物質へと変換し、蛍光プレートリーダーによって検出する方法を検討した。その結果、ADPを検出する酵素カップリング反応によりF1-ATPaseの反応を蛍光強度の上昇として検出することに成功した。さらにこの方法をマイクロチャンバーデバイスに実装した。結果、チャンバー内に閉じ込めたF1-ATPaseのATPase活性の蛍光計測に成功し、1チャンバーあたり10分子程度のF1-ATPaseが存在すれば、チャンバー内でのATPase反応を計測することが可能であることが分かった。これはスクリーニングの際に、ATPaseが1DNAあたり10分子以上合成されればその活性評価が可能であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでF1-ATPaseの計測方法として例がない、蛍光を用いたATPase活性の計測に成功しており、マイクロチャンバー内でのATPase活性の蛍光計測も実現できている。1分子までの感度には達していないが、10分子以上のF1-ATPaseが存在すればチャンバー内でも十分活性を評価できることが分かった。この分子数は、チャンバー内での1DNAからの発現により十分実現しうる数である。本研究課題においては、①デバイス内でのATPaseの計測、②発現・精製が技術開発の柱となるが、その①がほぼ実現できたことになる。そのためおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はマイクロチャンバーデバイス内での精製を組み込んだ生体分子スクリーニング技術を確立を行う。これまでに精製以外のスクリーニングプロセスのデバイス実装は完了しているため、そこに微小ドロップレット内でのタンパク質精製プロセスを組み込む。この実験の評価には、モデル分子として実績のあるAlkaline phosphatase (ALP)を用いる。精製プロセスでは、精製用官能基を表面修飾したドロップレット内での1DNAからのALP合成後に外液とドロップレット溶液とで溶液交換を行い、合成ALP分子とALPをコードするDNA以外のコンポーネントを除く。最終的にドロップレットに保持されたALPの蛍光基質分解に伴う蛍光上昇を蛍光顕微鏡で検出することで、ドロップ内での精製が成功しているかどうかを評価する。ゲルの種類や濃度、デバイスの表面処理や酵素固定の条件の探索を行いこの技術を確立する。
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