2019 Fiscal Year Annual Research Report
異方的構造変化を発動する自己集合化有機薄膜の創製と環境応答機能創出
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Engine: Design of Autonomous Functions through Energy Conversion |
Project/Area Number |
19H05385
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
庄子 良晃 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40525573)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薄膜 / 自己集合 / 環境応答 / 力学応答 / アクチュエータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、独自に開発した三脚型トリプチセンの自己集合により得られる「2次元シート構造+1次元積層構造」をもつ配向多層膜を基盤として、外部刺激や周囲環境変化に鋭敏に応答し、構造を異方的かつ可逆的に変化させる発動有機薄膜システムを構築し、新たな力学機能を創出することを目的とする。申請者らは、側鎖に内部不飽和結合部位を有する三脚型トリプチセン誘導体が形成する多層膜が、その層間に様々な有機溶媒分子を一分子層の厚みで取り込み、膜厚を異方的かつ可逆的に変化させることを見出した。本研究では第一に、系統的な分子ライブラリ構築と精密構造解析を通じて、配向多層膜が分子を可逆に取り込み伸縮するメカニズムの解明を図る。さらに、分子種選択的な取り込みを可能にする有機薄膜を開発する。また、有機薄膜が発動する際に生じる力学エネルギーと仕事量を評価し、巨大な力学応答を示す発動有機薄膜の構築へと展開することを目的とした。初年度は、多層膜に溶媒分子が取り込まれるメカニズムの解明に取り組んだ。具体的には、種々のトリプチセン誘導体を合成し、集合状態における溶媒取り込み能を検討した結果、トリプチセンに導入する側鎖の鎖長、不飽和結合の種類・数・位置、および側鎖の数が溶媒分子取り込み挙動に大きく影響することを見出した。さらに、QCMを用いたトリプチセン集合体の溶媒取り込み量評価システムの構築に取り組んだ。以上の検討を通じて、トリプチセン薄膜が溶媒を取り込み仕事するシステムの物質・評価基盤を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、トリプチセン集合体が溶媒分子を取り込んで仕事をする発動システムを開拓する上での分子デザインを抽出し、かつその発動作用を評価する上での分析基盤を構築することができた。上記の成果に基づいて、次年度において力学応答性有機薄膜開発を一層加速化できることが見込まれる。以上の理由から、本研究は「概ね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、初年度のスクリーニングにより得られた、溶媒分子取り込みによって大きな構造変化を示すトリプチセン誘導体を用いて、粉末X線構造解析とQCM測定を組み合わせた測定により、構造変化をもたらす取り込み分子量と構造変化量を相関づけ、より詳細なトリプチセン薄膜の溶媒取り込み機構を議論する。さらに、等温滴定カロリメトリーを利用して、トリプチセンのバルク集合体が溶媒分子を取り込む際の熱収支を検討し、溶媒分子取り込みをもたらす分子間相互作用について検討する。上記の検討を通じて、環境・力学応答性有機薄膜の化学の深化を図る。
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Research Products
(2 results)