2019 Fiscal Year Annual Research Report
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する分子機構の動的解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Engine: Design of Autonomous Functions through Energy Conversion |
Project/Area Number |
19H05387
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
清水 啓史 福井大学, 学術研究院医学系部門, 講師 (50324158)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 1分子計測 / 蛋白質 / X線回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではX線1分子動態計測法を用いて、生体で熱エネルギーが電気エネルギーに変換される際の分子機構を解明することを目指す。X線1分子動態計測法では高い時間空間分解能で生体分子の分子揺らぎや構造変化を捉えることができる。温度刺激を電気信号に変換する温度センサー蛋白質を観測対象として、温度によってどのように蛋白質分子の機能が活性化されるか、動的な側面から明らかにすることを目指して研究を行った。具体的には、金ナノ結晶を観測プローブとして蛋白質分子の1分子構造変化を捉える、X線1分子動態計測法を用いて、蛋白質の動きと温度の関連を調べる。標的分子として、温度によって活性化されるTRPチャネル(TRPM8, TRPA1, TRPV1, TRPV2)のうち、温度感受域の異なるいずれか2種を標的分子として温度変化に対する1分子動態応答を計測することを目指す。また、研究代表者が従来より1分子動態計測に取り組んできた、溶液pHによって活性が制御されるKcsAカリウムイオンチャネルの1分子構造変化に対する温度の影響を測定し、両者の結果を比較することで、蛋白質分子が温度センサーとして機能する際に、センサー分子に固有の1分子動態がどのようなものかを明らかにする。 この目的を達成するため、本年度はTRPチャネルの発現・精製系の構築、機能測定を行い、機能を保持した蛋白質の精製を確認した。また、X線1分子動態計測を行い、リガンドに対する運動応答を計測することに成功した。データを取得すると共にデータ解析を行い、初期データ解析の結果をアメリカ生物物理学会に口頭発表で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、代表者が開発を進めてきたX線1分子動態計測法を用いて、温度によって活性化されるTRP チャネル(TRPM8, TRPA1, TRPV1, TRPV2) のうち、温度感受域の異なるいずれか2種を標的分子として温度変化に対する1分子動態応答を計測することを目指す。また、pH依存性イオンチャネルであるKcsAチャネルの1分子動態の温度依存性を計測し、温度センサー蛋白質との差異を調べる。この目的を達するため、TRPチャネル発現・精製および機能によるスクリーニングは研究協力者である小川治夫准教授(東京大学)、村山尚准教授(順天堂大学)、呉林なごみ准教授(順天堂大学)の協力を得て行った。また放射光施設での実験および1分子電流評価は岩本真幸先生(福井大学)の協力を得て行った。 本年度は1種類のTRPチャネル分子の発現・精製に成功した。また、TRPチャネルの観測基板への固定方法・金ナノ結晶の導入方法を検討・決定し、1分子動態計測に成功した。初期データの解析結果をアメリカ生物物理学会で発表した。現在、KcsAカリウムイオンチャネルの動態計測を行い、データの蓄積を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では2種類のTRPチャネルとKcsAカリウムイオンチャネルの1分子動態計測を行い、その差異を検討することにより、温度センサー蛋白質固有の1分子動態を明らかにすることを目指す。今年度は1種類のTRPチャネルの1分子動態計測に成功するとともにKcsAチャネルの1分子動態計測データの蓄積にも成功した。 今後は、2種類目のTRPチャネルの発現・精製系の構築と1分子動態計測への応用を目指す。また、すでに測定システムが構築できているTRPチャネルとKcsAチャネルについて、その温度応答データを取得し、データ解析を進めていきたい。
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