2019 Fiscal Year Annual Research Report
発動分子の化学-力学エネルギー変換機構の解明に資する高速AFM技術の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Engine: Design of Autonomous Functions through Energy Conversion |
Project/Area Number |
19H05389
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
内橋 貴之 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30326300)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高速原子間力顕微鏡 / 一分子計測 / タンパク質 / 構造変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
i) DNA修復酵素MRE11/RAD50/NBS1(MRN)の動態解析:ヒトのDNA修復を担うMRE11/RAD50/NBS1複合体(MRN)の構造を高速AFMで解析した。従来、Rad50ダイマーはフック部位が開いた開環構造を取と考えられてきたが、高速AFMにより、MRN複合体の多くは閉じたリング構造を形成し、また、定説とは逆側のヘッドと呼ばれる球状ドメインで開きアーム部の構造も異なることを明らかにした。ヒトのみならず酵母や大腸菌のMRNホモログの分子構造を解析し、新たに発見されたヘッド部位でのリング開閉運動が種を超えて保存されていることも明らかにした。さらに、酵母細胞中のMRNのフックをSMCタンパク質のヒンジドメインと入れ替えたキメラMRNを作製し、キメラMRが酵母のDNA損傷を修復可能であることを見いただした(Tatebe et al, Nat. Commun. 2020)。 ii) タンパク質分子針と脂質二重膜との相互作用解析(A01-3上野GおよびA01川野Gとの領域内共同研究)バクテリオファージ T4の細胞膜貫通部位から作製されあた人工分針の脂質二重層膜との動的相互作用を高速AFM観察し、分子針が脂質膜に貫入していく様子を観察することに成功した(Ueno, Nanoscale 2020)。 iii) ゲル微粒子のタンパク質取り込み過程の観察( B01鈴木Gとの領域内共研究)ハイドロゲル微粒子にタンパク質が取り込まれる過程を観察し、ゲル微粒子の構造と電荷状態に依存して取り込まれるタンパク質のサイズや機構が異なることを明らかにした(Matsui et al, Chem. Commun. 2019)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、高速原子間力顕微鏡(AFM)による一分子動態計測を通し、発動分子の機能発現機構を明らかにする。また、高速AFM装置を基盤とした発動分子の化学-力学共役機構の解明に資する新規技術を開発することにある。高速AFMを用いた発動分子の機能動態解析は、研究実績の概要に記載しているように、DNA修復酵素や人工分針の機能動態、ハイドロゲル微粒子のタンパク質取り込み挙動などの観察に成功した。この他にも、ヘムタンパク質の集積過程(Hirayama et al, JACS, 2020 )や酵母プリオンのアミロイド構造 (Konnno et al, PNAS, 2020)のダイナミクス観察に成功して成果をあげつつある。領域内共研究も積極的に実施しており、現在8グループと共同研究を進めており、3グループとは既に共同研究の成果を論文として公表している。以上から、高速AFMを利用した発動分子のダイナミクス観察は順調に進捗している。 発動分子の化学-力学共役機構の解明に向けた新規技術に関しては、今年度はプラットフォームとなる探針走査型高速AFMの開発に注力した。設計・部品製作は終了し、現在組み立てと動作確認を行っているところである。現在までに、ガラス表面や脂質二重膜をテスト試料として高速AFM観察を行えるところまで確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
従来型の高速AFMを用いた発動分子の機能動態解析はこれまで同様に、領域家内共同研究を含めて積極的に実施していくことで、発動分子の創成に向けた領域の研究進展に尽力する。特に、最近A01上野Gと共同研究を開始した六量体リング状ATPaseのリング内協同性と化学-力学共役機構の解明を中心に行なう。装置開発に関しては、7月までに探針走査型高速AFMの立ち上げと操作性向上のためのソフトウェア開発を終える。次に、基板操作用のマニピュレータの製作に取り掛かる。弾性変形可能なPDMAを基板として、基板の力学操作が可能なことを確かめす。これに成功すれば、PDMS基板に微小管を固定し、微小管に伸長あるいは圧縮の力学負荷を印加しながら、キネシンの滑走状態を高分解能に観察し、レールタンパク質の構造変調とモータータンパク質の運動活性について研究する。また、PDMSとパターン基板を用いた中空脂質二重膜形成のためのパターン化井戸構造を持つ基板作製検討し、人工分子の脂質膜への再構成と膜内拡散のダイナミクス観察のための基盤技術を完成させる。
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Research Products
(26 results)
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[Journal Article] On-Membrane Dynamic Interplay between Anti-GM1 IgG Antibodies and Complement Component C1q2020
Author(s)
Saeko Yanaka, Rina Yogo, Hiroki Watanab, Yuki Taniguchi,Tadashi Satoh, Naoko Komura, Hiromune Ando, Hirokazu Yagi, Nobuhiro Yuki, Takayuki Uchihashi, Koichi Kato
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Journal Title
International Journal of Molecular Sciences
Volume: 21
Pages: 147
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Supramolecular tholos-like architecture constituted by archaeal proteins without functional annotation2020
Author(s)
Maho Yagi-Utsumi, Arunima Sikdar, Chihong Song, Jimin Park, Rintaro Inoue, Hiroki Watanabe, Raymond N. Burton-Smith, Toshiya Kozai, Tatsuya Suzuki, Atsuji Kodama, Kentaro Ishii, Hirokazu Yagi, Tadashi Satoh, Susumu Uchiyama, Takayuki Uchihashi, Koichi Kato
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 10
Pages: 1540
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Mutational and Combinatorial Control of Self-Assembling and Disassembling of Human Proteasome α Subunits2019
Author(s)
Taichiro Sekiguchi, Tadashi Satoh, Eiji Kurimoto, Chihong Son, Toshiya Kozai, Hiroki Watanabe, Kentaro Ishii, Hirokazu Yagi, Saeko Yanaka Susumu Uchiyama, Takayuki Uchihashi, Kazuyoshi Murata, Koichi Kato
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Journal Title
International Journal of Molecular Sciences
Volume: 20
Pages: 2608
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] The Fab portion of immunoglobulin G contributes to its binding to Fcγ receptor III2019
Author(s)
Rina Yogo, Yuki Yamaguchi, Hiroki Watanabe, Hirokazu Yagi, Tadashi Satoh, Mahito Nakanishi, Masayoshi Onitsuka, Takeshi Omasa, Mari Shimada, Takahiro Maruno, Tetsuo Torisu, Shio Watanabe, Daisuke Higo, Takayuki Uchihashi, Saeko Yanaka, Susumu Uchiyama and Koichi Kato
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 9
Pages: 11957
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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