2019 Fiscal Year Annual Research Report
金銀・ナノ粒子を用いたコンデンシン分子モーターの超高分解能DNAカーテン測定
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Engine: Design of Autonomous Functions through Energy Conversion |
Project/Area Number |
19H05392
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺川 剛 京都大学, 理学研究科, 助教 (20809652)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コンデンシン / 量子ドット / 金ナノ粒子 / 銀ナノ粒子 / DNAカーテン / 1分子蛍光顕微鏡観察 / ステップサイズ測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質合成、細胞内分子輸送、細胞形態形成、DNA の複製・転写・修復などの様々な生命現象は、アデノシン・グアノシン3リン酸(ATP・GTP)の加水分解エネルギーを機械的な動きに変換する発動分子(分子モータータンパク質)によって支えられている。近年、申請者らは1分子蛍光イメージングを用いて、染色体の形態変化に関わるタンパク質であるコンデンシンが、ATP 加水分解エネルギーを機械的なエネルギーに変換して DNA 上を一方向に歩進する分子モータータンパク質であることを明らかにした[Terakawa et al. Science (2017) 358:672]。また、コンデンシンが1秒間に2つの ATP を加水分解し、60塩基対を歩進することができることから、1つのATP の加水分解で30塩基対以上歩進することが示唆された。本研究の目的は、DNA カーテン法の中で金・銀ナノ粒子を用いることにより、空間解像度を飛躍的に向上させ、それを用いて、コンデンシン分子モーターの作動原理を明らかにすることである。 本研究では、DNAを作成し、そこに量子ドットや金・銀ナノ粒子で蛍光標識したコンデンシンをロードして、コンデンシンのステップサイズを測定する。本年度は、この実験を行うためのマテリアルを準備した。具体的には、コンデンシンの単離・精製、量子ドットと金ナノ粒子の抗体への共役、DNAカーテンのデバイス作成を行った。また、量子ドットを用いてコンデンシンを蛍光標識し、DNAカーテン上で1分子蛍光顕微鏡観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光標識可能なコンデンシンの変異体(HA-tag付き)の単離・精製を行い、SDS PAGEで確認した。コンデンシンはプラスミドのGALプロモータの下流にクローニングし、酵母で強発現させた。発現したタンパク質をHis-Trapカラム・Strep-Tactinカラム・タグ・ゲルろ過カラムクロマトグラフィによって単離・精製した。 量子ドットと金ナノ粒子の抗体への共役を行った。量子ドットはSiteClick抗体ラベリングシステムを用いて、HA抗体と共役させた。一方で、金ナノ粒子はNHS活性化金ナノ粒子標識セットを用いてHA抗体と共役させた。HA-tagをHA抗体で認識させることにより、コンデンシンを量子ドットや金ナノ粒子と結合させた。 DNAカーテン実験を行うためには、そのためのデバイスを準備する必要がある。まず、ウエハスピン洗浄装置を用いてガラススライドを洗浄した。次に、厚膜フォトレジスト用スピンコーティング装置をHMDSを塗布した。さらに、スピンコーターを用いてPMGI-SF5S、ZEP-520A、エスペーサーを塗布した。そして、高速高精度電子ビーム描画装置を用いてパターンの描画を行った。その後、ドラフトチャンバーにおいて現像・エッチングを行い、電子線蒸着装置を用いてクロムを蒸着した。 スラススライド上に描画したナノパターンにDNAを張り、DNAカーテンを蛍光顕微鏡観察した。そこに量子ドットで蛍光標識したコンデンシンをロードし、そのDNA上における動態を蛍光顕微鏡観察した。そして、トラッキングソフトウェアを独自に開発して、それを用いてコンデンシンのサブピクセルレベルのトラジェクトリを抽出し、ステップサイズを測定した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、現在のセットアップではステップサイズを正確に測定するのに十分な精度が得られないことがわかった。その原因の1つとして、DNAの張力の低さが考えられる。実際にDNAの短軸方向の揺らぎを計測してみると、ステップサイズの想定値である50 nmと同程度であった。このゆらぎを抑えるためにはDNAの張力を高める必要がある。そこで、今後の研究ではスライドガラス上に描画するパターンを変更する。これまでは、バリアパターンとペデスタルパターンを11マイクロメートル間隔で描画し、その間にDNAを張っていたが、これを13マイクロメートル間隔で描画し、その間にDNAを張ることによりDNAの張力を高める。 また、金ナノ粒子を利用することにより、位置決定精度を高める。現在は100ミリ秒の時間間隔で撮影を行っているが、金ナノ粒子の利用で、50ミリ秒以下の時間間隔で撮影を行うことが可能になると考えられる。 さらに、Flag-tagとHA-tag付きのコンデンシンのクローニング及び単離・精製を行う。このコンストラクトは2色の蛍光で標識することが可能である。このコンストラクトをDNAカーテン上にロードすることで、コンデンシンがDNA上を保身するメカニズムを明らかにする。
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Research Products
(2 results)