2019 Fiscal Year Annual Research Report
発動分子の機能発現過程における1分子・多分子ダイナミクス計測法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Engine: Design of Autonomous Functions through Energy Conversion |
Project/Area Number |
19H05402
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
東海林 竜也 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (90701699)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光ピンセット / 光圧 / DNA / NASSCA光ピンセット / 局在表面プラズモン / 顕微分光法 / 有限要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、外部刺激に伴う発動分子の集合・離散・配向分子運動を、光の力学作用である光圧により精密計測する技術を開発する。しかしながら、従来の集光レーザー型光ピンセットをそのまま分子系に適用させても、作用する光圧が微弱なため運動追跡は極めて困難である。そこで本研究では、プラズモン光ピンセットまたは研究代表者らが開発したノンプラズモニック増強光ピンセットを光ファイバ先端で利用し、発動分子に直接光圧を作用させ力学的運動の単分子または多分子計測を目指す。 2019年度は、光ファイバ上に形成するナノ構造体の設計指針を得るべく、ノンプラズモニック増強光ピンセットの機能と特徴を中心に明らかにしてきた。主要な研究成果として、以下の3点が挙げられる。 【(1) プラズモニック光ピンセットによるDNAの分離・捕集】局在表面プラズモンを利用すると、飛躍的に増強された光圧と共鳴光励起に伴い発生する局所加熱を分子系に作用させることが可能となる。この光と熱の協奏的作用を利用することで、溶液中を漂う塩基対数の異なるDNAを塩基対数(サイズ)に応じて、光圧と熱泳動により分離し捕集できることを実証した。【(2) 半導体ナノ構造による高分子鎖の光捕捉】研究代表者らが開発した半導体ナノ構造を利用したNASSCA光ピンセットは、熱の発生を抑制し、高分子鎖を捕捉できることを見出した。これは熱に弱い発動分子に増強光圧を作用させるには最適なナノ構造体であると期待できる。【(3) 有限要素法によるテーパ光ファイバ上の半導体ナノ構造の電磁場計算】以上の成果をもとに、テーパ光ファイバ上に作製するナノ構造体の設計指針を電磁場計算により得ることができた。 以上の研究成果に基づき本年度は、国際学術誌(査読有)3件、和文総説(査読有)1件、国際学会発表(招待講演)2件、国内学会発表(招待講演)3件などで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、本年度ではナノ構造を利用した新奇光ピンセットの機能と特徴を主に明らかにしてきた。これ以外にも、従来法の集光レーザー型光ピンセットを用いることで、金ナノ粒子の二量体形成を顕微散乱スペクトルにより明らかにした。このように光圧を利用することで、ナノ粒子の運動を制御できることを見出してきた。とりわけ本研究では、半導体ナノ構造によるナノ物質操作法は、従来法にはない長所を有していることを突き止めた。そこで、このナノ構造をテーパ光ファイバ上に形成することができれば、任意の位置に存在する発動分子に効率的に増強光圧を作用させ、運動追跡が達成できるかもしれない。現在、電磁場計算を用いてファイバ上に形成する最適なナノ構造の設計を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
光ファイバ上にナノ構造を作製し、ポリスチレンナノ粒子を捕捉ターゲットとして光圧計測の性能を評価する。独自の光圧計測・分光システムを構築し、集合過程による発動分子の力学運動を精密計測する。
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