2019 Fiscal Year Annual Research Report
拡張Vicsekモデルによる発動分子集合体の自己組織化法解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Engine: Design of Autonomous Functions through Energy Conversion |
Project/Area Number |
19H05403
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
住野 豊 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 准教授 (00518384)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自己駆動粒子 / 能動回転 / 集団運動 / 運動モード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では発動分子の自己駆動粒子,あるいはより広義の能動粒子としての側面に着目し,発動分子のマクロな機能化を自己組織的に実現することが目標である.この際,Vicsekモデルに代表される数理モデルと,実時間で観察可能なμmスケールの実験モデルを併用することで,nmスケールである発動分子に適用可能な手法を提案することを目指した.中でも一般的な分子が通常有する(A)斥力,(B)カイラリティ,(C)化学反応の特性を取り入れた数理/実験モデル作成を目指して研究を行った. 2019年度は(A)自己駆動性と形状の影響により生じる集団挙動に関して数理モデル先行で研究を進展させた.また本モデルの拡張として人間の混雑下の振る舞いに関して研究を行い公表論文として取りまとめた.ここでは自己駆動粒子が非等方な形状を持つことにより,能動回転の影響が強調され,系の流動化が促進されることを示した.副次的であるが,人間集団の渋滞を避ける上での知見を提示したと言える.また(B)カイラリティの影響を取り入れた数理モデルに関しては,九州大学の前多准教授との共同研究において数理モデルの観点から共同研究に協力した. (C)の化学反応の特性を取り入れた系に関しては,電気浸透流により外部電場を利用して集積と混合を繰り返すポリスチレン粒子系の実験的研究により進展が見られた.この系の数理モデルはある種の自己駆動粒子の化学反応の観点より議論ができる. 以上の研究に加え,2019年度は,拡散を介した散逸的な相互作用と保存力的な相互作用が競合することで生み出される粒子の運動挙動に関して単純な設定において,数値計算と理論計算を合わせて研究を遂行し公表論文として取りまとめた.他にも,実験モデルのための技術確立として電磁場や濃度により自己駆動する片面を金属コートされたヤヌス粒子系の実験系に関して技術を確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,自己駆動粒子のモデルの中でもVicsekモデルに特に着目をおいて,研究をスタートさせた.一方これまでの研究により,Vicsekモデルを前提とせず,様々な粒子間相互作用や自己駆動特性を取り入れた「能動粒子」すなわち発動分子の数理モデル/実験モデル作成がより望ましいとの状況に至った.これは,定常的な自己駆動性がある粒子が限られている点や相互作用によりはじめて駆動性を得る粒子が存在するからである. まず2019年度に行った研究としては能動性を持つ数理モデルとして,拡散による相互作用がもたらす粒子系の数理モデルに関して興味深い結果が得られた.特に.自ら忌避物質を放出するような能動粒子の集合系は,静止状態が不安定化し自発的対称性の破れの結果.自己駆動性を得る.このような粒子系の数理モデルに関して,2019年度の研究により単純な1次元2粒子系の解析的な結果が得られており,加えて2次元の多粒子系でも複雑な集団挙動が数値計算的に得られている.更に,こうした数理モデルに対応する実験モデル系として半面を金属で覆われたμmスケールのコロイド粒子,すなわちヤヌス粒子が濃度場により駆動される際,同等の振る舞いを示すことが理論的に提唱されている.我々は2019年度よりこうした濃度場駆動のヤヌス粒子系に関して実験系を作成し,粒子レベルでの運動を確認するに至っている. さらに,実験モデルを構築するため同じくポリスチレン粒子に電場を印加した系を作成/解析した.本系に関しては,異なる種類の粒子を混合することで,形状効果に起因した集団挙動が見られている.この系に関しては,粒子同士が接触することで粒子の運動挙動が変化することから,能動粒子を要素としてみた化学反応系の実験モデルとなっている.また,カイラリティーの影響を取り入れた自己駆動粒子の数理モデルに関しては,数値的に計算が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究で特にμmスケールの実験モデル系構築に目処を立てた.2020年度はこれらの実験モデル系の解析を先行させ具体性の高い数理モデル構築を行う.その後,既存の能動粒子の数理モデルへの帰着を行う.こうしてnmスケールに至る発動分子に適用可能な自己組織的集積手法を明らかにする. 第1の実験系は,(i)化学種により駆動されるコロイド粒子系である.2019年度の実験ではコロイド単独の運動を観察/再現することに成功した.理論的にこの系は濃度場を介して相互作用をする粒子集団系としてみなせる.こうした系で保存力と濃度場を介した相互作用が競合する際,多様な集団運動モードが見られる.2020年度は集団挙動を観察するとともに,数理モデルを2次元多粒子系に拡張し実験結果の再現を行う. また第2の実験系は,(ii)交流電場印加時に集団の離散/集合運動を示すコロイド粒子系である.この粒子系では,複数粒子種が存在する際に,コロイド粒子が長時間の離合集散を示す.2020年度はこのコロイド粒子の集団挙動に関して,数理モデルを構築するとともに,その一部の特性を説明する上で反応を伴うVicsekモデルに関連づけられることも数理的に示すことを目指す. 第3の実験系は,(iii)in vitro motility assayを用いた実験系である.本系に関しても共同研究を通じて実験を遂行するとともに数理モデル化を並行して行う.本系ではフィラメントタンパク質の自発的蛇行運動が実験的に観察されている.こうした自発的蛇行運動は集団化した際の渦運動に繋がる.2020年度はこの蛇行運動の起源に関して数理モデルと実験の双方の観点からその起源を探り制御することを目指す.また,カイラリティの破れとの関連にも着目し研究を進める.
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Research Products
(8 results)