2020 Fiscal Year Annual Research Report
少数細胞が規定する膵臓がん発生過程の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Singularity biology |
Project/Area Number |
19H05412
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
園下 将大 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (80511857)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 膵がん |
Outline of Annual Research Achievements |
がんは日本人の死因の第一位で、極めて深刻な福祉課題となっている。がんの中で最も患者予後が不良なものが膵がんで、その病態の理解や予防・治療法の開発が急がれている。これまでに、KRASやTP53、CDKN2A、SMAD4等の遺伝子変異が蓄積することで膵がん形質が悪性化するモデルが提唱されてきたが、その本態や治療標的はいまだ解明されていない。そこで我々は本研究で、変異が蓄積した一部のがん細胞ががん促進シンギュラリティ細胞として膵がん形成を促進するという仮説を立て、新規膵がん遺伝子型モデル動物としてショウジョウバエを使用することでこの検証に取り組んだ。 まず、ハエ幼虫の翅原基でRASを活性化した膵がん形成の初期モデル・1-hitハエを作成したところ、対照の非遺伝子組換えと比較して翅原基の大きさの増大とハエ生存率の低下を認めた。次に、このRAS活性化翅原基の一部の細胞においてp53の不活性化を追加で発生させ、RAS とp53の両遺伝子が異常になった2-hit細胞を持つ2-hitハエを作成したところ、ハエの生存率が1-hitハエと比較してさらに低下することが分かった。これらの結果は、2-hit細胞が周囲の細胞に影響を及ぼして個体の生存率を低下させることを示しているため、我々はこの2-hitハエの網羅的遺伝学解析によりこの機序の成立に必要なシグナル伝達経路を探索した。その結果、複数のキナーゼが重要な役割を果たすことを見出し、これらのキナーゼを阻害する化合物がこのハエの生存率を改善することを発見した。 以上より、遺伝子変異が周囲の細胞よりも蓄積した少数の細胞が発生することでがんの形質が増強することが個体レベルで明らかとなった。本研究で同定した、この過程の成立に重要なキナーゼ群を標的にすることで、膵がん促進のシンギュラリティ現象を標的とする新規治療法の確立を実現できる可能性がある。
|
Research Progress Status |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Research Products
(4 results)