2019 Fiscal Year Annual Research Report
Regulatory mechanisms of sponge stem cells
Publicly Offered Research
Project Area | Singularity biology |
Project/Area Number |
19H05421
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船山 典子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30276175)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 芽球形成 / シンギュラリティ細胞 / カワカイメン / 細胞集合 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイメンの芽球形成初期に着目し、幹細胞が集合し細胞塊を形成する事象に着目した研究は国内外でこれまで全くなく、また、芽球形成の特定の場はマクロスコピックにはランダム、即ち現在のところ予測不能である。芽球形成開始を捕らえ観察すること、その微小環境に何らかの傾向や特徴などがないかを明らかにし、幹細胞集団を引き起こす細胞・分子機構の解明を大きな目的に、このための基礎を築くことが本研究の目的である。2019年度は以下を試みた。1)カワカイメンゲノムへの遺伝子導入法の検討。当研究室で世界に先駆け確立に成功している一過的遺伝子導入法(未発表)は、無性生殖による個体形成の初期に適している。芽球形成はカワカイメン幼若個体を7日から10日ほど育てた後に誘導するため、同じ方法での遺伝子導入には成功しなかった。このため、恒常的な蛍光タンパク質発現により、全細胞または一部の細胞を蛍光可視化することを目的に、カイメンゲノムへの遺伝子挿入法の確立を目指し、挿入法の検討を行ったが、今のところ成功には至っていない。詳しくは次の進捗状況の項に記述する。 2)芽球形成のごく初期を捕らえる試み。当研究室ではこれまで、芽球形成の後期の事象である芽球骨片運搬に主に着目してきた。また芽球が形成される場に明瞭な特徴はなく、形成開始機構の手がかりは全く得られていない。芽球形成開始の場の手がかりを得る事を目的に、約70マイクロメートル厚の空間にカイメンの体の一部を形成させ、芽球形成を誘導、比較的観察が容易な厚みの少ない空間での芽球形成の詳細な観察を試みを行った。しかし、様々な工夫を試みたが、この条件で芽球形成のタイミングを制御することは技術的に非常に困難であり、観察数がまだ不足である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
他の動物で用いられている遺伝子導入法のうち、Cas9などを用いゲノムの特定の位置に任意の配列を挿入する方法は、非モデル生物であり、系統の確立、生殖及び世代を超えた飼育の確立などが出来ていないカイメンには不適当である。この点を考慮し、今年度はTol2に着目し、国立遺伝学研究所川上浩一博士に分与いただいたEGFPとTol2発現ベクターを用い、カワカイメンの一過的発現とEGFPの導入を試みた。しかし、当研究室で一過的な発現に成功している、別のプロモーター下にあるVenus遺伝子の蛍光が検出されるような遺伝子導入法によっても、EGFPの発現が検出されず、また、Tol2発現ベクターとの共導入によってもEGFPの発現を検出出来なかったことから、プロモーター+蛍光タンパク質の組み合わせを、当研究室で発現が確認されているものへと入れ替えたベクターを作成中である。新コロナウイルス感染拡大防止により、実験が進められない状況になったため、PCRで作成しベクター作成に用いたDNA断片部分の内、一部の配列が確認出来ていないものの、複数のプラスミドクローンがえら得ており、目的とする蛍光タンパク質発現プラスミドの作成には成功している見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
4月現在、新コロナウイルス感染拡大防止により実験は停止しているが、実験が再開出来れば、作成したプラスミドの配列の確認を完了させ、これを用いてまずカワカイメン幼弱個体における一過的な蛍光タンパク質(Venus)の発現を各にする。平行してTol2発現ベクターのプロモーターを入れ替えたプラスミドを作成、このプロモーター改変Tol2発現ベクターと、先の蛍光タンパク質発現ベクタとを同時に遺伝子導入し、確率的にカワカイメンゲノムへの遺伝子挿入を試みる。一方、ゲノムに蛍光タンパク質遺伝子など任意の遺伝子が挿入された細胞だけを選択するため、蛍光タンパク質と共にピューロマイシン耐性遺伝子が挿入出来るプラスミドを作成する。(適する濃度のピューロマイシン存在下では、カイメン細胞が死滅することは、2019年度にすでに確認済みである)。 芽球形成開始の観察については、引き続き行い、水管との関係、体の形状などから在る程度のあたりをつけられるようになれば、タイムラプスを用いた解析を行い、シンギュラリティ細胞同定の手がかりを得る予定である。
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