2019 Fiscal Year Annual Research Report
Identification and functional analysis of singularity cells on intratumoral heterogeneity
Publicly Offered Research
Project Area | Singularity biology |
Project/Area Number |
19H05427
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山口 知也 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (70452191)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腫瘍内不均一性 / 肺がん / シンギュラリティ / ROR1 / がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺がんにおける「がん幹細胞」は、その存在が示唆されているものの、実際の存在性も含めて、未だ詳細は明らかになっていない。特に、肺腺がんは病理像から不均一な細胞集団であると予想されるが、癌発生のはじまりは何であるのか、何を起点に癌が発生し、いかなる臨界点を超えると不均一な細胞の集団形成が認められるのか、など理解されていない点が非常に多い。これまで研究から、リネジ特異的生存癌遺伝子であるTTF-1によって転写活性化されるROR1が、EGFRからの生存シグナルの維持に必須な肺腺癌細胞の生死を決する「アキレス腱」であることを見出した。そこで本研究では、これまで誰も明らかにしていない肺腺がんの不均一性、及びがん幹細胞を起点としたシンギュラリティ現象を明らかにするため、がん組織のin vitroモデル化、及び亜細胞集団の同定や特徴解析を行い、将来的な新規抗がん剤開発の情報基盤の確立を目的とした。これまでの検討から、がん組織において、ROR1陽性細胞は不均一に存在していることが判明し、さらにマウス等を用いた検討より、非常に高い癌原性を有することを見出した。また、がん細胞を用いて、がん進展に必要なニッチファクターの特定を行い、xenograftと類似した管腔構造や細胞極性、機能局在を有するオルガノイド様細胞塊の構築し、器官組織の透明化技術を応用することで、オルガノイド様細胞塊の三次元画像解析を行った。その結果、、管腔構造かつ細胞極性を有し、xenograftと形態学的に類似したオルガノイド様細胞塊の構築に成功した。さらに、不均一な膵がん組織中に存在するROR1陽性細胞を起点として、わずか1細胞から、再び階層性を有した膵がんオルガノイドを再構成できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、当初の研究実施計画の通り、概ね順調に進展した。まず、実際のがん組織におけるROR1の発現を調べた。変異型EGFR-L858Rを肺特異的に発現する肺腺がんモデルマウス腫瘍切片を作製し、ROR1の免疫組織染色を行ったところ、ROR1の発現を認め、その染色像は不均一であったことから、ROR1発現細胞は腫瘍内に不均一に存在する可能性が示唆された。次に細胞株を用いて免疫不全マウスを用いた異種移植片のモデル化を行なった。肺腺がん細胞であるA549は、二次元培養時は均一にROR1を発現しているが、xenograftではその発現が低下し、一部においてROR1発現陽性細胞が存在することをフローサイトメトリー、および免疫組織染色で確認した。また、xenograft内に不均一に存在するROR1陽性細胞がどのような性質を持つか検討するため、ROR1の発現度合いに応じて細胞を分取し、癌原性の指標であるコロニー形成試験を行なった。その結果、ROR1陽性細胞は陰性細胞に比べ、高いコロニー形成能を持つことが判明した。さらに、超免疫不全マウスを用いた腫瘍形成試験を行ったところ、同じくROR1陽性細胞が非常に高い腫瘍形成能を持つことが分かった。興味深いことに、xenograft中のROR1陽性細胞から再構成された腫瘍は、再びROR1の腫瘍内不均一性を示し、元のxenograftと似た階層性を持つ病理像を示した。次に、不均一性を持つがんの時空間的進展解明を進めるため、in vitroで生体内の組織を模倣する技術であるオルガノイド培養モデル化に着手した。作製した肺がんオルガノイドは、細胞に極性が現れ、管腔構造を持った進展形態、ムチン様物質を貯留する細胞を含む分化形態といった点について、xenograftを一部模倣することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
肺腺がんは病理像から不均一な細胞集団であると予想されるが、癌発生のはじまりは何であるのか、何を起点に癌が発生し、いかなる臨界点を超えると不均一な細胞の集団形成が認められるのか、など未だ不明な点が多い。本研究では、臨床反映性の高い肺腺がんオルガノイド、及び遺伝子改変肺腺がん発症モデルマウス腫瘍の確立、及び継時的解析を行い、多様性が生み出される特異点を探るとともに、がん幹細胞を起点として生み出される多様性について、構築されたモデルに精緻なマルチオミクス一細胞解析を行い、シンギュラリティ細胞としてのがん幹細胞の同定、及び亜細胞集団創出におけるシンギュラリティ現象の全貌の解明を目指している。これまでの検討から、ROR1は、肺腺がん腫瘍内で不均一な発現を示すことが分かり、強い癌原生を有することが分かってきた。このことは、ROR1陽性細胞が腫瘍進展における起点となる可能性が考えられる。そこで来年度においては、臨床反映性の高い肺腺がんオルガノイド、及び遺伝子改変肺腺がん発症モデルマウス腫瘍の確立、及び継時的解析を行い、多様性が生み出される特異点を探るとともに、ROR1陽性細胞を想定したがん幹細胞を起点として生み出される多様性について、構築されたモデルに精緻なマルチオミクス一細胞解析を行い、亜細胞集団の同定、及び特徴解析を行う予定である。さらに、細胞系譜解析を用いたシンギュラリティ細胞としてのがん幹細胞の同定、及び亜細胞集団創出におけるシンギュラリティ現象を明らかにする。
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