2020 Fiscal Year Annual Research Report
Positive and negative occlusion effects of sanitary mask
Publicly Offered Research
Project Area | Construction of the Face-Body studies in transcultural conditions |
Project/Area Number |
20H04568
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河原 純一郎 北海道大学, 文学研究院, 教授 (30322241)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 衛生マスク / 顔 / 魅力 |
Outline of Annual Research Achievements |
顔はその人物が誰であるかという個人同定情報だけでなく,笑顔などの情動状態を伝えるはたらきをもつ。衛生マスクは顔の下半分を遮蔽するという点でコミュニケーションにとっては不利な効果をもつといわれていた。COVID-19流行によって衛生マスクの装着が強制される世界に一変した中で,本研究では,COVID-19流行前に測定した,衛生マスクつきの対人認知データと現在を比較し,対人認知が未曾有の社会的事象によって変容するようすを調べた。COVID-19 の流行前に,マスクの着用に関する信念を調査したところ,約半数の評定者はマスクの着用は不健康であるという印象を持っていた。この傾向は黒色マスクで特に強く見られ,不健康だという印象を持つ回答者が70%近くに達した。しかし,同じ調査をCOVID-19流行中の現在に実施したところ,不健康さとマスクの連想は弱まっており,1/3から1/4程度の者がマスク着用者に対する不健康さを感じているだけだった。一方,マスク装着顔の対人魅力については,2017年にわれわれが提案した2要因モデルを検証する好機となった。2要因モデルでは遮蔽とマスク装着による不健康さが魅力を引き下げていると捉えている。今回の調査ですでにマスク装着と不健康さの連合が失われていることが分かったため,マスク装着顔の魅力は遮蔽による効果だけになるはずである。66枚の顔画像に対して見た目の魅力を測定したところ,予測に一致して,もともとの魅力が高い者は魅力が下がり,低いものは上がるという効果が得られた。この結果は2要因モデルを支持しており,COVID-19の流行という社会的状況の変化によって,マスク装着顔の認知モデルが検証できたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マスク装着顔の魅力測定は順調に実施できたが,その後に検討する予定であった,他の人種グループの評定実験の参加者募集に対する応募者数は伸び悩んだ。学内では対面授業と遠隔授業が混在しており,従来であれば授業のない空き時間に実験参加をしていた人々からの参加が途絶えたため,もしくは対面接触を避けて実験参加辞退を忌避した人が増えたためであると考えている。感染対策をどれだけ厳密にしても参加を強制できるわけではない。実験参加は自発参加にもとづくため,参加者数が低迷することは致し方ない。可能な範囲で遠隔実験に振り分けてもいるが,実験に用いる顔画像が遠隔參加者側のスクリーンショットなどで拡散してしまう危険があり,全ての実験材料で遠隔実験が可能になるわけではない。工夫して遠隔実施を推進する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度こそは所属機関でのCOVID-19への対策が現実に即して緩和されることを期待し,実験室実験で多の人種グループのマスク顔について参加者からのデータ取得を進める。学内各所への掲示を打診しているが,概ねネガティブな回答が多い。例えば教務関連のweb掲示板への参加者募集を依頼したが,特定の研究のための掲示は対象外であるとのことであった。各種ソーシャルメディアでの募集も試みたところ,掲示直後のみに限って若干参加者が増えることがあったが,その後すぐに沈静化した。webでの遠隔実験に切り替えることも選択肢のひとつかもしれないが,そうした場合は試行数を限定し,実施時間を大幅に短くする(5分程度)必要があり,測定精度が犠牲になる。また,遠隔実験の場合は謝金支払い手続きのハードルが高いうえ,個人情報漏洩対策が十分ではない。総長,理事を通じて改善を求めたが,財務部経理課からは対策・改善は必要ないとの回答しか得られず,困惑を極めている。この実験方法は有効に実施できる見込みがなく,実験室実験の機会がふえることを待つことにする。
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Research Products
(1 results)