2020 Fiscal Year Annual Research Report
Possibility of biosphere driven by iron
Publicly Offered Research
Project Area | Aqua planetology |
Project/Area Number |
20H04610
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
牧田 寛子 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (40553219)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 純鉄 / 鉄利用微生物 / 鉄酸化細菌 / エンセラダス / 微生物生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球の海洋地殻の主要元素の一つである鉄は、ほとんどが2価鉄の状態で存在しており、地球を覆う海洋地殻の規模を考えると、鉄の酸化反応は海底下生物圏を支える重要なエネルギー獲得反応の1つと言える。一方、地球外の天体では、鉄は一部0価の状態で存在する。例えば、土星の衛星エンセラダスは、形成過程において一度も溶融を経験していないため、岩石中に0価の鉄(純鉄)が含まれていると示唆されている。エンセラダスでの生命活動を考えた場合、純鉄の酸化反応(0価→2価)からエネルギーを獲得できる微生物が存在する可能性がある。しかし、純鉄を利用できる微生物の存在、種類、代謝プロセスは、地球環境においても未解明な点が多い。 本研究では、培養実験により純鉄をエネルギー源として利用できる微生物の探索と、それら微生物の生化学的性状を解明し、得られた知見からエンセラダスや地球内外の環境での純鉄を軸とした生態系の予測を目的とする。 本年度は、海水環境下で生育可能な純鉄利用微生物群を明らかにすることと、新規な純鉄利用微生物を獲得するために、実際の海洋に純鉄を設置し、そこに繁茂した微生物群を調査することとした。設置した純鉄表面に形成された微生物を含む酸化鉄を植種源とし、人工海水をベースとして、エネルギー源となる電子供与体として0価のFe(純鉄)を、種々の無機物質を電子受容体として加えた培地にて培養を試みた。その結果、純鉄をエネルギー源とする、増殖が良好な微生物群を集積培養することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、海水環境下で純鉄を利用できる微生物(群)を、エネルギー源となる電子供与体として0価のFe(純鉄)を、種々の無機物質を電子受容体として加えた培地を用いることで集積培養することに成功し、今後の実験に用いる微生物の獲得と培養条件を確立することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、純鉄を利用できる微生物(群)を用いて、エンセラダスなどの純鉄を含む岩石が存在する環境を想定した種々の条件下で培養実験を行い、純鉄の酸化速度や鉄酸化機構を調査する。また、化学的環境背景(水温、栄養塩濃度等)が、純鉄利用微生物の増殖、代謝活性(鉄酸化速度や物質生産能)へどのような影響を与えるかについて調査する。さらに、純鉄利用微生物の代謝活動や機能が、純鉄をエネルギー源として利用しない微生物にとって、どのような影響を与えるのかについて明らかにする。
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