2020 Fiscal Year Annual Research Report
3次元拘束空間における階層的相分離構造の自由エネルギーLandscape探索
Publicly Offered Research
Project Area | Discrete Geometric Analysis for Materials Design |
Project/Area Number |
20H04625
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藪 浩 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (40396255)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミクロ相分離構造 / Cahn-Hilliard方程式 / 微粒子 / 拘束空間 / 自由エネルギー / Landscape |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の目的は微粒子内で形成される相分離構造の無限次元における自由エネルギーLandscape構築に向けたデータベースを作成することである。Coupled Cahn-Hilliard(CCH)方程式は初期状態から一定条件下で安定構造への形成過程をシミュレーションすることができる。この際、初期状態からのエネルギー変化をモニタリングすることが可能である。これらのエネルギー変化過程を様々な条件下および得られる構造に対してマッピングを行うことで、計算される反応の自由エネルギーおよびその変化から、微粒子内で形成される相分離構造の無限次元における自由エネルギーLandscape構築に向けたデータベースを作成を行った。 具体的には、CCH方程式の内、これまで詳細に検討してこなかった相分離構造形成に関する時定数パラメータを調整することにより、Transientな構造を含む微粒子内のミクロ相分離構造を系統的に明らかとした。さらにそれらの自由エネルギーを計算することで、その安定性についても議論を進めた。 さらに、実験としては、微粒子を調製する際の濃度や溶媒蒸発速度等、微粒子形成の時定数に影響するパラメータについて検討を行い、立方体や多面体構造を含む多様な微粒子の作製を行った。電子顕微鏡や電子顕微鏡トモグラフィー技術を用いた二次元および三次元構造観察を行い、その構造観察を進め、実験条件と微粒子構造のライブラリ形成を行った。さらに溶媒やマイクロ波を用いた加熱アニーリング処理などにより、その構造の熱的安定性やアニーリングによる構造変化についても実験的に検討を行い、微粒子表面の組成がアニーリングによって変化する様子などを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験的な微粒子構造ライブラリの形成およびCCH方程式を用いたモデルによる微粒子内でのミクロ相分離構造に関する構造ライブラリの形成について順調に進展しており、現在その相関についての議論を進めている。議論の中から相分離構造の時定数が自由エネルギーLandscapeを検討する上で重要なパラメータの一つであることが本研究の過程で新たに浮上し、研究が大きく進展した。現在この新たに見出したパラメータを基に実験と理論の相関およびLandscapeにつながる自由エネルギーの議論を進めている。当初予定していたよりも論文化は遅れているが、新たなパラメータの発見は本研究において非常に重要なマイルストーンとなるため、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
拘束空間における相分離構造はバルクと異なるが、なぜバルクと異なる相分離構造が選択されるのか、また、その構造を決めている幾何学的原理は何かについては明らかとなっていない。 そこで、実験とシミュレーションによって得られるバルクおよび拘束空間におけるブロック共重合体の相分離構造について、Betti数などのトポロジカルな観点から整理することで、トポロジーの観点から拘束空間における相分離構造を整理する。微粒子だけでなく、既往の報告にある薄膜などの1次元拘束空間や、シリンダーなどの2次元拘束空間などの構造も対象とすることにより、バルクと拘束空間の幾何学的な違いを明らかとする。 各構造間の経路探索を行う上で、Optimization-based Shrinking Dimer(OSD)法などによる経路探索手法を用い、構造転移・形成過程の最適な経路を明らかとする。実験的に得られる構造形成および転移過程の遷移構造から、実際の実験系における経路探索とOSD法から示唆される転移・形成過程を比較し、そのConsistencyを明らかとする。 D/L0>2の領域において、シミュレーションからブロック共重合体微粒子の形態が内部のミクロ相分離構造の影響により球とは異なる形態が形成されることが示唆されている。この様な特異な形態がなぜ形成されるのか、パラメータの相関や幾何学的意義の解明から得られた知見を基に、拘束空間空間における相分離構造が微粒子の形態に及ぼす影響について実験と理論パラメータの相関および幾何学的な観点から解明を行う。
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