2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study of dynamic and molecular basis of gyroid formation
Publicly Offered Research
Project Area | Discrete Geometric Analysis for Materials Design |
Project/Area Number |
20H04629
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
齋藤 一弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30195979)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 三角格子 / 連続スピンモデル / 相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
液晶性ジャイロイドの形成機構を明らかにするための基礎研究として,並行配列を嫌う古典スピンモデルの解析に注力した.液晶性ジャイロイド相に関する実験研究から分子の逆紡錘型形状の重要性が明らかになっているので,隣接分子が平行でも反平行でもない配列を好む場合の基本的な挙動は検討に値すると考えられる.今後の実験結果の解釈の礎とすべく,知見を蓄積している.いくつかの2次元格子上で古典無頭スピン系のシミュレーションを行ったところ,三角格子に限って種々の異常な挙動が見られた.まず,bipartiteな格子上の基底状態と質的に異なる基底状態(最低エネルギー状態)を持つのでその性質を明らかにした.bipartiteな場合には基底状態は連続的に縮退しているが,三角格子やカゴメ格子では,フラストレーションは無いが,有限の巨視的エントロピーを持つ縮退状態にある.この状態は離散的であり,計算で得られた熱容量からも確認できた.一方,有限温度については,Hohenberg-Mermin-Wagnerの定理(HMW定理)を念頭に,連続的な配向自由度を持つ古典スピン系は有限温度で相転移を示さないと考えられているにも関わらず,三角格子では熱容量,スピン相間関数の減衰挙動,平衡所要「時間」(モンテカルロ・ステップ数)などに相転移を思わせる振る舞いが見られた.相転移の可能性を視野に,システムサイズ依存性などを検討するとともに,HMW定理と整合した解釈について種々,検討を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
背景を深めるために行った「平行配列を好まない無頭スピン系」の検討で,2次元三角格子の結果が極めて異常のため,もっぱらそこに関わっているが,「連続自由度を持つ古典スピンの二次元系は有限温度で相転移を起こさない」という常識に反している可能性があるため,その振る舞いを明らかにする事は学術的に十分意義があると考えている.振る舞いを明らかにし,理解するには領域内の数学者との議論が非常に有益と考えられることから,領域の研究の進展にとっても貢献できると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り学術的価値が高いと思われる二次元三角格子の系の振る舞いを明らかにする.磁場の印加によって相転移をより検出しやすくなる可能性があるのでこれを検討する.平行して,3次元系のシミュレーションに取りかかる.一方で,等方性液体とジャイロイド相のエントロピー差の実験結果の解析を開始し,無構造からのジャイロイド構造の動的形成機構の熱力学的特性化を行う.
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