2020 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算と離散曲面論を用いたグラフェンナノ構造体の触媒活性制御
Publicly Offered Research
Project Area | Discrete Geometric Analysis for Materials Design |
Project/Area Number |
20H04639
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大戸 達彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90717761)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、防食と触媒作用という背反する化学現象を両立させるために、卑金属電極の表面を、1ー10層に層数制御したグラフェン(炭素シート)膜で覆うという方法に着目した。従来、1ー2層のグラフェン膜にはイオンや分子への物理的な遮断能力はなく、物質はグラフェン膜を透過し下地の金属にたどり着き腐食を引き起こす、一方、3ー5層以上のグラフェン膜はイオンや分子を物理的に遮断することが可能で、触媒反応はグラフェン膜上のみで起こり、その触媒能力は下地金属の特性を強く反映する、と考えられていた。ところが、近年の解析結果から、卑金属の表面を被膜するグラフェンの層数と、被膜される卑金属の触媒性能には相関があることが分かってきた。しかしながら、グラフェン膜によって卑金属表面とプロトン(酸)の直接接触が遮断されているにもかかわらず、卑金属電極が優れた触媒能力を発揮するメカニズムの解明には至っていなかった。 そこで本研究では、これまで提唱されていた触媒メカニズムを検証するとともに、グラフェン膜で覆われた卑金属の表面で触媒反応が起こるメカニズムの解明を目指した。 理論計算で水素分子透過のシミュレーションを行った結果、水素分子は窒素原子がドープされている欠陥構造やこれよりも大きなナノ欠陥を通じて室温で排出可能であることが確認された。このことは、触媒反応は、グラフェン表面で起こっているのではなく、プロトンがグラフェン膜を透過し、卑金属表面で水素分子が生じ、構造欠陥を通じて外へ排出されていることを示している。すなわち、グラフェン膜に対するプロトン透過現象を伴う、新たな反応ルートが明らかになった(Nat. Commun. 12, 203 (2021).)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際の概要に記載したように、理論計算を用いてグラフェン・合金混合触媒の水素発生機構を明らかにすることができた。 数学的モデルを用いたドープグラフェンの設計についても、順調に解析を進め、現在論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
数学的モデルによるグラフェン構造の解析を行った際の指標(ガウス曲率)をもとに、グラフェンの歪みと、歪みがドーパントの入りやすさ、すなわち水素発生触媒能力に与える影響を第一原理計算を用いて検証する。
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