2020 Fiscal Year Annual Research Report
人工原子ネットワーク構造における物性・機能のトポロジー的解釈と制御
Publicly Offered Research
Project Area | Discrete Geometric Analysis for Materials Design |
Project/Area Number |
20H04645
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎木 敏治 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70261196)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ネットワーク / コロイド結晶 / スピングラス / 組み合わせ最適化問題 / ポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元コロイド結晶による動的ネットワークの形成:2枚のガラス基板を用い、直径2umのビーズをスペーサとして2次元スリットを形成した。上部のガラス基板に相変化材料としてGeSbTeを成膜した。直径1umのビーズを分散させた純水でスリット内を充填し、レーザ光照射によってマランゴニ流を発生させ、2次元コロイド結晶を形成した。複数個所を起点として結晶構造を成長させた際、それらがマージする際に発生する不整合を、偶発的に混入したサイズの若干小さな粒子の周囲で吸収していることを見出した。つまり、フラストレーションがそれらの粒子の周囲に局在化していると解釈される。これをヒントにスピングラス問題の解探索アルゴリズムとして以下を考案した。スピングラス系を、正負の相互作用を導入した連成振動子系に置き換え、固有値問題として解き、固有ベクトル(各振動子の振幅)の符号をスピンのアップ・ダウンに対応させた。振幅の小さな振動子の周囲にフラストレーションが局在化するため、その符号を反転させるだけで、多くのフラストレーションを一気に解消することができる。問題のサイズごとに、最も効率的に局在化が起こる固有値が系統的に変わることを見出した。 ポリマーを模した固定ネットワーク構造の形成と力学的特性の評価:ポリスチレンビーズの表面に長鎖DNAをビオチン・アビジン結合で固定化し、ビーズ同士がランダムに結合したネットワーク構造の作製を試みた。DNAをYOYO-1によって染色し、蛍光顕微鏡化でネットワークを可視化した。また、ポリスチレンビーズを磁性ビーズに置き換え、可変ネットワーク構造形成のための準備を進めた。また、これらとは独立に金ナノ粒子をDNAで接続した複合体に対して、ナノポア通過過程の観察、それらの波形解析、シミュレーションとの対比を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2次元コロイド結晶による動的ネットワークの形成については、実験による仮説実証にとどまらず、これをヒントとした新しいアルゴリズムの発案にまで至った。さらに、磁性粒子を使うことによりスピングラス問題の書き換えを実験的に導入し、動的な解探索への応用の着想を得た。加えて、同じく磁性粒子を用い、磁区構造を模擬したラビリンス構造を形成し、最適構造に至る過程を可視化する方法の検討も開始した。 ポリマーを模した固定ネットワーク構造の形成と力学的特性の評価については、ビーズへのDNAの結合率が不足しており、改良を必要とする。その一方で、磁性ビーズを用いた可変ネットワーク形成のための準備、ナノポア通過過程を利用した力学的特性評価については順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
磁性ビーズを高さがビーズ直径の1.5倍程度の2次元スリットに閉じ込め、垂直磁場を印加する。座屈的な1次元配列が安定な構造となるが、1次元配列同士は反発するので、自律的にラビリンス構造を形成する。1次元配列の安定性と反発のバランスを2次元スリットの高さによって制御する。磁場印加の速度に依存して局所安定解が得られるので、その構造の特徴をパーシステント・ホモロジーによって解析する。さらに光照射加熱によってマランゴニ流を発生させ、ラビリンス構造の変形を通して力学的特性を評価し、構造の特徴との相関を明らかにする。ラビリンス構造形成中に光照射加熱し、対流アシストによる安定構造形成の高速化を試みる。その際、100nm径の金ナノ粒子を対流モニターとして導入する。
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Research Products
(9 results)