2020 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study on the geometry and electronic structures of soft-crystals based on periodic QM/MM method
Publicly Offered Research
Project Area | Soft Crystals: Science and Photofunctions of Easy-Responsive Systems with Felxibility and Higher-Ordering |
Project/Area Number |
20H04676
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中谷 直輝 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (00723529)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 周期的QM/MM法 / 分子結晶 / 量子化学計算 / ベイポクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、北大・加藤グループで報告されたNi錯体のベイポクロミズム現象について、周期的QM/MM法を利用した計算解析を行い、その分子論的メカニズムの解明を行った。当初、前年度まで公募班で参画されていた京大・榊らによって行われた予備検討結果を引き継いで、高精度計算による吸収スペクトルの計算解析を行ったものの、実験スペクトルの傾向を再現するまでには至らなかった。そこで、問題点がNi錯体の電子状態にあるのではなく、分子結晶のモデルにある可能性に着目し、分子間の量子的な相互作用を取り込むために、2分子をQM領域として考慮した計算を行ったところ、πスタッキング相互作用によるピーク分裂が観測され、計算スペクトルのピーク位置に関しては改善が見られた。また、ベイポクロミズムを示さない類似錯体の結晶構造と吸収スペクトルの比較から、Ni錯体の結晶構造のリファインメントを行った結果、榊らが予測していたものとは異なる結晶構造が得られた。2021年度は新しく予測された結晶構造に基づいてさらなる検討を進め、ベイポクロミズムメカニズムの解明を行う予定である。 他方で、Pd-Siクラスターの結晶構造における結晶パッキング効果の検討について、東大・砂田グループとの共同研究を進めた(現在・論文執筆中)ほか、宇宙空間における化学進化に関与すると考えられる低温CO分子結晶の表面吸着種の計算解析を北大・香内グループとの共同研究として進めた(現在・論文投稿中)。 Ni錯体の分子間相互作用の重要性について明らかになったことからも、2021年度は、当初予定していた分子間相互作用の取り込みを可能にする周期的QM/MM法の拡張を急ぐ予定である。現在までに、2分子間の重なり行列とFock行列から1次元無限系の分子モデルを構築する手法を定式化しており、これをiDMRG法によって解くプログラムの開発を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の当初の計画では、周期的QM/MM法のプログラムを利用した応用計算研究を進めつつ、同手法を1次元無限量子系へと拡張する手法の開発を進める予定であったが、応用計算研究(Ni錯体のベイポクロミズム)に関して、高精度理論による計算解析の結果が実験結果と一致せず、スペクトルの差異について再検討が必要になったことから計画に遅れが生じる形となった。一方で、本研究課題の主題である分子結晶中の1次元的な非古典的相互作用の重要性を示す例として興味深く、研究の深度という意味はより深まる結果となった。 1次元無限量子系への拡張に関しては、直交基底系の構築が大きな問題となると思われたが、重なり行列がblock-circulant行列になること、さらに、これを対称直交化することでユニットセルに局在化した分子軌道が自然と得られることが明らかになったため、当初考えていたよりも自然な形式で理論を定式化できることが分かった。現在、本手法を1次元的に配列させたモデル分子系へと適用するためのプログラム開発に着手している。 また、東大・砂田グループとの共同研究として進めているPd-Siクラスターの結晶構造の計算解析や、北大・香内グループとの共同研究として進めている低温CO結晶表面における吸着種の計算解析など、ソフトクリスタルのコンセプトとは直結はしないものの、分子結晶の性質に関連する研究に関しては一定の成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、進捗が遅れているNi錯体のベイポクロミズムに関する共同研究について、2分子間の量子的な相互作用を含めた検討を早急に進め、年内に成果をまとめる予定である。また、周期的QM/MM法のプログラムに関しては、プログラムバグの除去等を2020年度に行ったことで汎用的に利用する目途がついたので、領域内の共同研究等もより積極的に進めることで2020年度の遅れを取り戻したいと考えている。 周期的QM/MM法の1次元量子系への拡張として、2021年度は1次元HubbardモデルのiDRMGプログラムを分子系へ拡張することに注力する。1次元的に配列した分子系のハミルトニアンの構築方法はすでに確立したので、年度前半に1次元的に配列させたモデル分子系におけるテスト計算を実行し、理論の主要部分に関しては年内を目途に成果をまとめたい。年度後半にはQM/MM部分の接続を行い、実際の分子結晶系へ応用を行う予定である。
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Research Products
(3 results)