2020 Fiscal Year Annual Research Report
相分離構造体とプロリン異性化の連携機構の解析と可視化ツールの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Approaches for Miscellaneous / Crowding Live Systems |
Project/Area Number |
20H04687
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
米田 宏 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (60431318)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プロリン異性化 / SMN / 核内構造体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、核内構造体であるCajal bodyを分散させる化合物をツールとして、その分散のメカニズムを解析する中で得られた、化合物によるSMNタンパク質のプロリン異性化を、より広範なプロリン異性化現象への解析ツールとして利用することを目指している。またSMNのプロリン異性化がCajal bodyの形成にどのように関与するかを調べることがもう一つの研究目的である。 本年度は化合物処理により異性化を起こすプロリンにアラニン置換変異を導入したSMNタンパク質が野生型とタンパク質の性状にどのような違いを持つかを解析した。その結果、nanoBITと融合させたSMNをin vitro翻訳系で合成し、SMNが有する多量体化活性をnanoBITのルシフェラーゼ再構成で検出する実験系を構築して試したところ、プロリン変異体では37度以上の温度でルシフェラーゼ活性が低下することから、プロリンがcis型でない場合にはSMNの多量体形成能が不安定化している可能性が示された。実際に、細胞内でもこの変異体を発現させたところ、野生型と異なる挙動を示した。とくに強制発現時にSMNは細胞質で巨大な環状の塊を形成することが多いが、42度で発現させた場合、プロリン変異体ではその塊の形成が観察されなくなった。このことは試験管内で観察された多量体形成の不安定さが細胞内でも起こることを示しており、SMNのプロリンのcis型コンフォメーションの生理的な重要性を示唆するものと考えている。今後、このコンフォメーションの変化を蛍光タンパク質を用いたレポーターなどに応用することができれば、当初の研究目的の1つにつながると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標はプロリンの異性化状態がSMNタンパク質機能に及ぼす影響を可視化するところにあり、in vitroと細胞内過剰発現の2つの実験系で違いを可視化することができたため、概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究概要で述べたとおり、SMNの特定のプロリン残基がタンパク質の機能(多量体化)に影響することが明らかとなった。本研究の目的の一つはプロリン異性化の現場を細胞内で可視化することにあり、このような異性化による構造不安定性が惹起されるという観察を元にして、今年度はそれをより解像度と可視性の高い手法に変換することを考えている。また、構造体形成に関しては、ライブイメージングの導入により、プロリン異性化の変化と構造体分散の時間軸での比較を行うことで、両者の相関を詳しく解析することを予定している。
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